社会問題に関するもの
日本人と皇室との関係が分かりません
私は日本の大学に中国から留学しています。中国にいたとき、日本の特徴について学校でディスカッションしたとき、天皇の存在を挙げる人がいました。雅子さまの健康のことや後継者のことがマスコミで話題になることがいかにも日本らしいというのです。ところが、日本に来てみると、皇室の方を尊敬している若い人にほとんど出会いません。日本人にとって皇室とはどういう存在なのでしょうか。
日本人にとって天皇とは、日本人である自己を確認する「鏡」のようなご存在です。
神武天皇から今上陛下まで、実に125代にわたって天皇の御位(みくらい)は受け継がれてきました。これは世界のどの王室にも類を見ないことであります。
歴代天皇は多くの和歌(御製〔ぎょせい〕)をお詠みになっておられますが、その中の一つ、江戸時代のまさに武家政治の最盛期に、桃園天皇は次のような歌をお詠みになりました。
「もろおみ(諸臣)の朕(われ)をあふぐも天てらす皇御神(すめらみかみ)のひかりぞとおもふ」
その歌の意味を考えますとき、天照大御神の御徳への感謝の思いや、天皇が日本の古き時から未来へとお心を通わせ、さらにすべての民から仰がれているご自分の立場・位というものについて深く考えておられることが伝わってきます。これを何度も唱えていると、私にはジーンと心を打つものがあります。
このように、日本には建国したときから常に天皇という中心者がいて、また人々から仰がれてきたのです。
宇宙には中心があるという日本人の考え方
もともと日本人には、すべてのものには中心があるという考えがあります。これは、宇宙には中心があるという「御中(みなか)」の思想から生まれたものです。
「御中」というのは、宇宙、地球、人間、動植物、鉱物に至るまで、一切のものが生成してくる生命の根源であります。古の人々は、この根源なるものを天之御中主神(〔あめのみなかぬしのかみ〕宇宙の大生命)として、畏敬の念をもって崇(あが)め拝してきたのです。
私たちの先祖は、日本建国の時より、常にこの「御中」に立ち還ることを忘れず、またそこからものを考え、生かすという作業を繰り返し行ってきました。そこから日本の文化・伝統が生まれたのです。その理念を今なお、生きておられるのが、まさに天皇であり、皇室の方々なのです。
日本人にとって天皇とは、日本人である自己を確認する「鏡」と言えましょう。日本人が天皇陛下を崇敬するのは、日本人の心の中に絶対なる中心者を信じる思いというものがあるからなのです。
そして中心者でありながら、天皇はいかなる権力、思想、イデオロギーなどからも無縁です。常に無私無欲のご存在で、ご自身のことを考えて行動なさる事は皆無です。ただ、ひたすら国民の幸せと繁栄、平和を祈っておられ、宮中でのお祭りは、年間約20近くにもなるのです。
「皇室の方を尊敬している若い人にほとんど出会いません」とのことですが、たしかに皇室について考える機会が若い人にあまりないので、関心をもっていないだけかも知れません。それは今の教育の問題でもありますが、しかし、日本人の意識の根底には中心者を崇めたい、つまり天皇を敬う心が必ずあると私は信じています。
このQ & Aは、『理想世界』平成16年12月号に掲載されました。
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