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人クローン胚に反対を表明

生長の家として初めて公式見解:文部科学省の作業部会に

宗教法人「生長の家」では、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室が今年6月20日付で発表した「人クローン胚の研究目的の作成・利用のあり方について−人クローン胚研究利用作業部会中間とりまとめ−」に対する見解をまとめ、当法人「総裁室」の名前で同対策室に提出した。これは、同対策室が「中間とりまとめ」に対する意見を募集したことに応じたもので、『「人クローン胚中間とりまとめ」への意見』と題して人クローン胚の作成・利用に対する6項目の反対意見を述べ、より問題点の少ない体性幹細胞(成人幹細胞)の研究推進を提案している。人クローン胚の研究利用については、生長の家副総裁、谷口雅宣先生が、講習会でのご講演をはじめ、『今こそ自然から学ぼう』(宗教法人「生長の家」刊)などのご著書、またインターネット上のブログ『小閑雑感』などで反対の立場を明らかにされていたが、教団として見解を発表したのは今回が初めて。

人クローン胚の作成と利用の流れ

人クローン胚とは、ヒトの未受精卵から核を除き、代わりに体細胞の核を移植して成長させることによって生ずる細胞(群)のこと。

人クローン胚を胎内に移植して育てるとクローン人間が誕生する恐れがあるため、現在の日本ではその作成が法的に禁止されている。

一方、人クローン胚から細胞の一部を取り出し、培養することによって得られるES細胞は、心筋細胞や神経細胞などさまざまな細胞に分化する多様性と、ほとんど無限に増殖する高い増殖能力を有している。加えて治療を必要としている人の体細胞を用いれば、移植しても拒絶反応の生じない臓器や組織の細胞を作成できると考えられている。そのため、病気や事故等で失われた組織を修復する再生医療への応用を目指し、人クローン胚の作成・利用を条件付で許可することが国で検討されている。

同中間とりまとめは、人クローン胚の研究目的の作成・利用を認めるために必要となる基本的な考え方をまとめたもので、これに対して今回の生長の家の見解では、「国が人クローン胚の研究・利用にゴーサインを出す一歩手前まで来たことを憂慮する」と表明。

続いて、「人クローン胚は、ヒト受精胚と同様に胎内に戻せば人として生まれる可能性をもつものであるから、それを研究目的に利用することは、人間の命を他人の目的のために利用することになるので、反対する」との立場を明らかにした。

具体的には、同中間とりまとめに対して、

1.「他に治療法の存在しない難病等のための再生医療の研究目的」を想定しながら、他の個所で「治療に当たって何らかの問題がある場合には(中略)他に治療法が存在しないものとして取り扱う」と書かれており、矛盾している。

2.胚は「人の生命」が表れている“場”であるから、ES細胞を作成するために破壊することは「他者の生命の犠牲の上に成立する医療」となり非倫理的。

3.胚は痛みを感じないから破壊してよいという考え方により、「神経に障害をもつ人間を、他人の治療手段に利用できる」という考え方が社会に広がる可能性がある。

4.未受精卵の入手には副作用の強い排卵誘発剤を使用しなければならず、提供者に精神的、肉体的負担を強いる。

など、6項目の反対意見を述べ、最後に「生長の家は、倫理性、安全性、さらには実効性の面で問題の多い人クローン胚の研究に力を注ぐかわりに、すでに治療実績のある体性幹細胞の研究に注力すべきと考える」と結論づけている。

体性幹細胞(成人幹細胞)は、へその緒中の臍帯血をはじめ胎盤、血液、毛根などに分布している細胞で、さまざまな組織に分化する能力を持ち、採取に際して患者への負担が少なく、また受精卵は必要としないため、倫理的な問題も少なく、医療の現場でもすでに実用化されている。

同対策室によると、現在、団体や個人から提出された意見を集計中で、今後開かれる作業部会において、それぞれの意見を個別に検討していく予定とのこと。

谷口雅宣先生はご著書『今こそ自然から学ぼう』の中で「クローン胚にも霊は宿る」と示され、「現代の科学では普通、霊魂の存在は無視されているから、クローン胚はモノとして扱われたり、せいぜい皮膚や神経細胞と同等の細胞生命として扱われる恐れが十分ある。(中略)だから、私は人のクローン胚の研究には賛成できないのである」と述べられているが、今回の公式の意見提出によって、受精卵という段階から人間の“生命”として尊重する生長の家の教えがいっそう広く認識されることが期待される。

生長の家副総裁、谷口雅宣先生は、「今年6月1日の本部機構の改革で総裁室ができ、その設置の目的である“宗教活動の統一性を保ち円滑かつ迅速な運動を進める”ための体制が整ったことで、こうした見解をまとめることができた。私としては、早くからクローン胚の利用などの生命倫理の問題に対する考えを講演や著作、ネット上のブログを通じて表明しているので、今回の見解公表もその一環であると考えている。今後も生命操作技術のように肉体と霊にかかわる問題は、宗教団体としての考えを明らかにしていく必要があると思う」と語られている。
(意見の全文は、こちら