昨年8月、イスラームをテーマに米国で開かれた「世界平和のための生長の家国際教修会」で基調講演を行ったカリード・アブ・エル・ファドル博士の著書が、このほど翻訳され、日本教文社から刊行される。
タイトルは、『イスラームへの誤解を超えて――世界の平和と融和のために』(米谷敬一訳/7月発売予定/四六判344頁/並製/定価1,800円)。
同書は、過激派によるテロ事件などの陰で見落とされがちな、イスラーム本来の寛容性や平和的・人道主義的な信仰を紹介するもので、「万教帰一」を説く生長の家の立場から、イスラームの理解を促すだけでなく、日本語の類書は極めて少ないため、宗教界のみならず思想界にも一石を投じるものと期待される。
エル・ファドル博士は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法学部教授。イスラーム法研究の第一人者で、昨年、国際的な人権賞である「レオ・エッティンガー人権賞」を受賞、米国のテレビやラジオで活躍するジャーナリストでもある。昨年度の国際教修会では、病身を押して演壇に立ち、熱弁を振るってイスラームの真の姿を伝え、参加者に大きな感銘を与えた。
今回、翻訳・刊行される著書は、博士が2005年に出版したもの。原題は“THE GREAT THEFT:Wrestling Islam from the extremists”(直訳「大いなる窃盗――過激派からイスラームを救う闘い」)で、国際教修会のテキストとなった。翻訳書には、新たに、博士による書き下ろしの“序文”も掲載される予定。
同書は、2001年9月11日の同時多発テロ事件以降、とりわけ混迷を深めるイスラーム世界に対し、博士がムスリム(イスラーム信徒)の立場から、イスラームの伝統や思想を社会的・歴史的に見直し、現在のイスラームが抱えている問題を明確に示しながら、世界平和への展望を述べている。
構成は第1部と第2部からなり、12の章に分かれている。
第1部では、現在のイスラームが「穏健派」と「厳格主義者」に分裂し、対立していることを明らかにし、テロ行為を容認する過激な思想を生んだ「厳格主義者」がどのように発生し、勢力を広げてきたかを検証。「厳格主義者」は、決してイスラームの主流派ではないことを明らかにしている。
第2部では、すべてのイスラームに共通している基本的信仰を易しく紹介した上で、神とその創造の目的をどう考えるか、非ムスリムにどのような態度で接するかなど、幾つかの項目に沿って「穏健派」と「厳格主義者」との見解の相違を説明。
世界平和を実現するためには、人道主義的で他宗教や他文化に寛容な「穏健派」の思想をムスリムが自ら発信し、拡大することが必要であることを訴えるとともに、イスラームへの無知や偏見、憎悪が「厳格主義者」を後押ししていることを説き、非ムスリムの人々にイスラームへの正しい理解を呼び掛けている。
イスラームが注目を集める中、日本でも関連書籍が増えているが、学術的な視点のものが多く、本書のように自らがムスリムであり、米国の大学教授でもある著者が、信仰者として、学識を兼ね備えた立場から語っているものは貴重といえる。
エル・ファドル博士が国際教修会で講演を行ったきっかけは、生長の家副総裁・谷口雅宣先生が、18年1月、ブラジルでの国際教修会の帰途に立ち寄ったニューヨークの書店で偶然原書に興味を持たれて購入され、ブログ「小閑雑感」で紹介。
その後、勅使川原淑子・アメリカ合衆国教化総長と雪島逹史・国際部部長がUCLAを訪れて講演を依頼。生長の家についての説明を受けた博士は、生長の家とイスラームの相関性や類似性に感動し、数度の交渉を経て、講演が実現した。
本書は20年度の生長の家教修会のテキストに決まっている。