生命あふれる森のために

 戦後、日本では復興で使う木材を供給するため、全国に植林が行われましたが、その後、安価な輸入材が大量に入手できるようになり、植林された森林の多くは間伐されず、放置されてしまいました。


 私はそうした森林を見たことがありますが、非常に細い木が密集しているので、昼間でも暗く、ほとんど下草が生えていません。こうなると昆虫がいなくなり、昆虫を餌にする小鳥や小動物もいなくなり、さらに、これらの小動物を捕食する猛禽類なども姿を消してしまい、健全な生態系が成立していない“死んだ森”となってしまいます。


 ですから、国産の リ材を利用することは、森の復活に貢献できることになるため、現在は何かを作る時には木材選びから考えるようになりました。一例ですが、写真の木製コースターは、地元山梨県で育った杉を使って作りました。生命あふれる森が少しでも増えることを祈りながら、これからもクラフト制作を続けたいと思います。
       

(國分祥行・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.89(2017年8月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.13」

※この記事は2017年に執筆したものです

既製品を買う前に

 3年前から薪ストーブの生活が始まり、室内では薪を段ボール箱に入れていました。が、寒さが厳しくなると、段ボール箱では量不足が判明。そこで、薪用のラックをネットで検索すると、高額のため手が出ない……。しかし、ラックの写真をよく見ると単純な構造で、家に建築端材があり、材料も確保できたので、「これなら自作できるかも」と思い、作ってみました(写真①)。とても売り物になるような品物ではありませんが、自分で使う物なので気にすることもなく、大変満足でした。

写真① 初期型


 その後、このラックを使っているうちに、「ラックを分割したい」「下に車輪があれば移動しやすい」ということに気づき、現在の形に変えていきました(写真②)。もし買ったものだったら、途中で使い勝手が悪くても、そのままだったかもしれません。自作品だからこそ、躊躇なく改良できたのです。
 現代はお金を出せば何でも物が揃います。しかし、こんな時代だからこそ、自作することで様々な気づきを得られるのではないでしょうか。

写真② 分割し、車輪をつけた改良型

(國分祥行・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.86(2017年5月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.11」

※この記事は2017年に執筆したものです

「豊かな気持ちで生活を楽しむ」

こんにちは、SNIクラフト倶楽部事務局の中井です。

新型コロナウイルスの問題で、新聞やネット、テレビでは不安なニュースが連日報道されています。
多くの人々が、一日でも早い終息と、世界の平和な日常を取り戻すことを願っているかと思います。

突然ですが、私は以前まで眼鏡業界で営業職をしていました。
その頃の私は毎日忙しく、文字通り「心を亡くして」指示とノルマに
追われる日々を過ごしていました。
そんな当時の心境などを思い出しながらも、
今回の新型コロナウイルスの問題を機に考えたことを、記事にしてみました。


端材でスマホスタンドを作ってみる

3月の終わり頃、家の倉庫を掃除していた時、すごくきれいな木目の端材を見つけました。
この木を使って何か作れないかと考えました。

「そうだ。スマホスタンドを作ってみよう」

ちょうど、スマートフォンを使って会員の方々とビデオ通話をする機会が増えていたので、スマホスタンドが欲しかったのです。

早速、のこぎりで木を切って、紙やすりでじっくりと磨いていきました。
あせらず、優しく木の表面を磨いていくと、木も私の動きに合わせるように、自分の木目の美しさを、ゆっくり、ゆっくりと見せてくれました。

私があせらずに作ることで、木は、自分が本来持っている美しさを私に教えてくれました。

それで、完成したのが、この作品です。

こんなふうにスマホを立てて使います。
差し込む溝を調節すれば、スマホの角度も変えることができます。

お店に行けば、もっと格好良く、機能的なスマホスタンドは売っているでしょう。
でも、私にとっては、このスマホスタンドが一番のお気に入りになりました。
なぜなら、この作品の材料である何の変哲もない1枚の板は、この私に豊かな時間を与えてくれたからです。


不安な日々が続くなかで

4月に入って、新型コロナウイルスの感染拡大の防止のため、私が勤務する生長の家国際本部“森の中のオフィス”が閉鎖されました。
突然の在宅勤務で業務となった私は、「全国の会員の皆さんは元気にしてるのかな?」と心配になりました。

「そうだ。絵手紙を届けて、少しでもみんなに元気になっていただこう」

実は、今まで行事などで絵手紙を描いたことはありましたが、その絵手紙を誰かに送ったことは一度もありませんでした。

「明るく 優しく いのちを 観つめて」

一枚ずつ、じっくりとていねいに、心を込めて書きました。
春らしく桜の花を描きました。

「喜んでくださるかな」

そんな想いで、一枚一枚真心を込めて描いていると、私自身が幸せな気持ちになりました。
そして、届いた方の嬉しそうな表情が思い浮かび、桜の花びらの優しさまで感じることができました。

上手に描けないと思うと、ちょっと尻込みしてしまいます。
でも、上手に描けるかどうかよりも、描いている時にどれだけ豊かな気持ちになれるか、このことの方が尊いことなんだと気づきました。


いのちを生かす生活 

最近私は、

「どうすれば自分は幸せに生きることができるのだろうか」と悩むことはやめて、
「どうすればまわりが幸せに生きることができるのだろうか」と考えるようにしています。


新型コロナウイルスの影響で在宅勤務になり、あまり外に出ることができなくなりました。

そんな私が、今心がけていることは、豊かな時間を過ごすということです。
ごはんを自分で作ってみたり、お風呂掃除をしたり、洗濯物をたたんだり、いろいろやって楽しんでいます。
早く片付けようなんて思わずに、一つ一つのことをじっくりと味わいながらするんです。

タオル一枚でも、ていねいにたたんでるだけで、いろんな気づきが与えられます。
豊かな時間をタオルが与えてくれます。

今まで当たり前のようにしていたことも、できないことが多くなりました。
できなくなったことを数えれば、キリがないほどたくさんあります。
でも、私は思います。


今できることの中に、私たちが行うべき正しい生き方のヒントが、きっとあるんじゃないかと。

今、いのちを生かす生き方を考えるチャンスを与えられているような気がします。

この機会に、じっくりとていねいに、豊かな時間を味わいながら、日常生活やクラフトを楽しみたいと思います

(SNIクラフト倶楽部 中井憲治)

つくる、祈る、日々の生活 No.5

環境負荷の少ない、地元産の木材を使ったモノづくり

私は、材木や端材などを使って、日常生活に役立つモノを手作りして楽しんでいます。
今回ご紹介するのは、ウッドデッキ用の階段。自然素材である木材を使うことで“環境にやさしい素材”を使うという目標はクリアできますが、もう一歩踏み込んで、同じ材木でも輸送のための燃料消費が少ない材木を選びました。

ホームセンターには安価で加工しやすい材木が並んでいます。しかし、そのほとんどは北米や北欧などから船で運ばれてきたもので、それだけ輸送のために化石燃料を使い、二酸化炭素を排出して、環境に負荷を与えているのです。
そこで、私は自宅からほど近い製材所を訪ね、国産か県産の材木で階段を作りたい旨を説明。すると、地元・八ヶ岳で伐採したカラマツ材を提案してくれました。イメージ通りに階段が出来上がっただけでなく、地元産の木材を使うことで地域の活性化につながり、温暖化対策の一助となったことも喜びになりました。
(永井 暁・SNIクラフト倶楽部)

白鳩誌No.80 2016年11月号より

木の端材から新たなモノをつくり出すよろこび

子どもの頃、自宅の物置には要らなくなった木の端材が保管されていました。
日曜大工と奉仕活動が大好きな父は、歩道の側溝のフタが腐って、歩行者がはまらないように、半年に1回、端材を利用して新しいフタにつくり替えていました。そんな父親の姿を真似て、私も一緒にフタづくりを手伝ったり、自分で整理箱や本棚などもつくりました。下手でも自分でつくったモノには愛着が湧き、いつまでも大切に使いました。

ここで紹介するのは、最近つくった木箱。長さが不揃いの端材を段違いにつぎはぎにすると、既製品にはない面白いデザインになりました。私は「木工は、隙間があっても、ゆがんでいてもいい」と思っています。廃棄処分される予定だった端材を最大限に生かして、新たなモノをつくり出すことができたよろこびの方が大きいからです。モノに宿る“いのち”に触れたような感じです。
(永井 暁・SNIクラフト倶楽部)

白鳩誌No.79 2016年10月号より