「再生」させることの楽しみ

角材にドリルと棒ヤスリで穴をあける
キューブ状に切り出す
柿渋を塗り、飾りをつける

 2年前、「自然の恵みフェスタ」に何か出品しようと思ってひらめいたのが、壊れた衝立ての再生です。理科教材店で買ったままだった試験管もあり、衝立てをばらした角材と試験管を組み合わせて、一輪挿しを作ることにしました。


 角材にドリルで穴を開け、キューブ状に切ったものに試験管を挿すのですが、試験管とドリル刃の直径が合わず、ドリル刃を4回も買い直し、棒ヤスリでも削りました。キューブ部分も正確に切れず、台形になったり、ドリル穴も垂直にならず、ピサの斜塔のようなものも……。飾りのモチーフは、絵心のある妻の作です。


 柿渋で塗装し、「puu(フィンランド語で木の意)」というブランド名をつけて、完成した5個を出品すると、嬉しいことに完売しました。ものを再生させることは、新品を買うより楽しくて創造的な体験です。

(田中晴夫・SNIクラフト倶楽部)

白鳩』誌No.93(2017年12月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.17」

※この記事は2017年に執筆したものです

花のいのちを生かす押し花

バラとクリスマスの華やかな作品
テーマは「草原の中での休日」。
散歩する女の子2人と蝶々を追いかける男の子の楽しい休日をイメージして製作

 10年ほど前から、母と一緒に押し花教室に通っています。材料は、父が実家の庭を手入れして咲かせた花などを素材に、母が押してくれた有難い物も使っています。
 ほとんどの花や葉は、1週間くらい乾燥させると押し花に使えるようになります。着色はしないで“そのままの色合い”を生かしますが、どれも美しくて個性的です。


 押し花の魅力は、「絵ハガキ」 や「しおり」等、どなたでも小さな作品づくりから楽しめることや、自然界には一つとして同じ形や色がないので、同じ種類の花を使っても雰囲気が少しずつ違って、それぞれの良さを生かした作品づくりが楽しめることです。その季節の花・葉・草・枝などを無駄なく使うことで自然を感じながら、教室の見本を参考にし、時には自由な発想でデザインを考えてつくっていると、押し花には、“花のいのちを生かしながらの作品づくり”を楽しむ良さが詰まっていることを感じます。
 これからも、自然の恵みに感謝しながら楽しく作品をつくり続けたいと思っています。

(西村典子・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.91(2017年10月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.15」

つくる、祈る、日々の生活 No.6

森の散歩から生まれた、素朴であたたかい小物

 わが家では、冬期の暖房として薪ストーブを使っているので、焚きつけ用の小枝の準備は欠かせません。ウォーキングのついでに、自宅周辺の森で小枝を拾うのが日課です。

 そんなある日、樹皮が赤紫色を帯びた褐色で、光沢のある小枝を拾いました。調べてみると、ヤマザクラだと分かりました。


「こんな美しい小枝を、焚きつけ用として燃やしてしまうなんてもったいない! 木工作品として生かせないだろうか?」



 こうして作ったのが、今回ご紹介する花器です。ノコギリでいろいろな長さに切断した小枝を、使い切ったガムテープの芯にボンドで固定しただけのシンプルな器。そこに妻が、森で拾ってきた木の実や葉などを飾ってくれ、素朴であたたかみのある作品に仕上がりました。

 お店で買わなくても、ちょっとした工夫で心豊かに暮らせるもの。そんな生活を夫婦で楽しんでいます。


(永井 暁・SNIクラフト倶楽部)


作り方

①使い切ったガムテープの芯と小枝を用意し、小枝は適当な長さにノコギリで切っておきます
②芯の周りに小枝を並べて輪ゴムで仮止めした状態で、木工ボンドで固定して完成! 
その中に好きなものを飾ってみましょう

『白鳩』誌No.81(2016年12月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.6」

SNIクラフト倶楽部・展示コーナーだより♪

*展示コーナー・2020年度の作品が揃いました*

2019年に、国際本部の“森の中のオフィス”内に誕生した
SNIクラフト倶楽部の展示コーナー


このコーナーは、主に“森の中のオフィス”を見学される方へ
生長の家のプロジェクト型組織(PBS)の活動、低炭素のライフスタイル実践の紹介を目的として、
SNIクラフト倶楽部メンバーの作品を展示しているものです。

こちらの記事もあわせて読む↓

2019年4月完成「SNIクラフト倶楽部・展示コーナーが完成♪」


2年目となる2020年の展示コーナーには、
全国のSNIクラフト倶楽部メンバーにも協力をいただき、
沢山のすてきな手づくりの品が集まりました。

どの作品もひとりひとりの個性が光り、
見ていて心が温かくなるものばかりです。

そんな作品たちをこれから紹介させていただきます。


*作品紹介*

クラフトに使う材料も
「自然素材」「自然由来の製品」を使うようにしています。

糸、毛糸、木材、竹材、植物染料などを使用し、
化石燃料由来のものはできるだけ使用していません。(再利用品は除く)


『竹皮の弁当箱』作者:つしま屋 
天然の竹からとった皮(2019年5月採取)でつくられた作品です。 時が経っても、傷みはなく、むしろ、しっかり乾いて丈夫になっていて、 まだかすかに竹の香りも残っています。

『Tシャツヤーンのひもポシェット』 作者:kiramekiyukie  
古着のTシャツを細く切り、一本の糸にして、編まれた作品です。

『里山の春』 作者:ひだまりの家 
ぎんなん、松葉、かぼちゃの種、桜の枝などでつくられた作品です。

『紫陽花染めのタッセル』 作者:花鳥舎
生長の家赤坂“いのちの樹林”で剪定したあじさいの葉で、
草木染めにした絹糸からつくられた作品です。

『エコクラフトテープのかご』 作者:あーちゃんのカゴ 
エコクラフトテープと必要最低限の接着剤で つくられた作品です。この作品をご覧になった方に“「自分でも作ってみたい」と思っていただけたらうれしい”との想いで出品いただきました。

『めぐる季節』 作者:andante 
天然素材の布と糸で八ヶ岳の四季を表現した作品です。
額は端材とそうめんの木箱でつくられています。

『リネン×和紙糸の食器洗いクロス』 作者:手作り雑貨ふわふわ工房 
日本製のリネンと和紙糸のワッフル生地、綿100%のミシン糸でつくられた作品です。
タグ部分は麻100%のテープに、日本製の綿100%の刺繍糸で刺繍がほどこされています。

『麻ひもタワシ』 作者:あゆさんのエコタワシ 
黄麻(ジュート)を指で編んでつくられた作品です。

『コットン毛糸タワシ』 作者:有機編紡 
オーガニックコットンの糸で編んだ食器用タワシです。

『小鳥の語らい』 作者:ミセス・ローズ 
森の中で仲むつまじく語らう小鳥たちを押し花で表現した作品です。

『フレンチリーブトップス』 作者:kasty.kasty.kasty
綿100%の生地と、レースはリネンのハギレを使用。
自分の服は可能なかぎり自給自足をしたいという思いからの作品。

『リネンの刺し子バッグ』 作者:kasty.kasty.kasty
リネンのハギレをつぎ合わせ、裏布は洋服を作った余り布を使用。
布の補強に飾りの要素を加えた“刺し子”作品です。

『八ヶ岳ブックスタンド』 作者:暁工房 
山梨県産スギ材を使用し、柿渋で塗装された作品です。
八ヶ岳をイメージしてつくられています。

『竹のランプシェード』 作者:Bang Bamboo 
地元・山梨県北杜市の竹林から採取した竹で作った作品です。
太陽光を蓄電したバッテリーでLEDライトを光らせます。

『スマホスピーカー』 作者:むすび木工 
建築端材及び山梨県産材でつくられた作品です。

*おわりに*

こうして作品が集まると、
「クラフトする」ことへのひとりひとりの想いに、
前向きなパワーを感じます。

そして、つくった人の個性や存在を感じることができて
「手づくりってすごいな~」と改めて思いました。

今この画面を通して、作品をご覧いただいたみなさまにも、
自然重視のクラフトの素晴らしさを感じていただき、
何かつくりたい! というきっかけになっていましたら、嬉しく思います。

(SNIクラフト倶楽部 松尾富美子)

【つくり方・材料】草木染めってどうやってやるの? -タマネギの皮編-

「草木染めをしてみたい、でもどうやってやるの??」
そう思っている方も多いのではないでしょうか。

今回は、初めての方でも簡単にできる、タマネギの皮を使った草木染めの方法を紹介します。

皮は茶色ですが、染めるときれいな明るい黄色になります。

すべて自宅で簡単にできますので、ぜひ試してみてください♪

(ここでご紹介する材料の種類や量、方法は一例です。いろんなやり方があるので、あなたのやりやすい方法で染めてみてくださいね)

【 材 料 】

タマネギの皮・・・
ハンカチ1枚につきタマネギ3~4個分の皮が目安です

・・・
1枚。今回はオーガニックコットン(綿)の布を縫ってハンカチにしました。
(綿、麻、絹がおすすめで。)

媒染剤(ばいせんざい)・・・
焼ミョウバン 大さじ1
(スーパーのお漬け物作り売り場などで売っています)

助剤(じょざい)・・・
豆乳:水=1:1で割ったもの。
ボールの中でハンカチが浸るくらいの量。


【 道 具 】

・・・
1個。ステンレスかホーローの鍋

ざる・・・
2個。これもステンレス素材


さいばし・・・
2膳。トングも活躍しました


ボールまたはバケツ・・・
助剤に浸す、染液をこす、媒染液に浸す等に使用


計量カップ・・・
1リットルを計れると便利


たこ糸、麻紐、輪ゴム、ビー玉など・・・
しぼりをする時に使用


ハサミ


【 事前準備 】

1.染める植物を決める

 最初にどんな植物で染めるか決めましょう。

 野菜や果物の皮、花や葉っぱなど、いろんな植物で染まります。

 もし迷ったら、こちらもご参考にどうぞ

 「意外に簡単!自宅でできる草木染めで自然の色使いを楽しもう♪」

 今回は、比較的簡単にできるタマネギの皮を使用しました。

ふだん料理した時にでる皮を溜めておけば、用意しやすいですよね。


2.ハンカチをお湯で煮る、または洗う

 染める布の汚れや油、糊を取って綺麗にします。

 中性洗剤などを使って洗濯する方法もありますが、

 今回は沸騰したお湯で30分ほど煮ました。

 煮た後は絞って干します。

裁断した布を縫って使う場合は、洗うことで布が縮むので、裁断する→煮るor洗う→縫う→助剤に浸す 
の順番が良いです


3.ハンカチを助剤(豆乳液)に浸す

乾いたハンカチを、助剤に浸して染まりやすくします。
 
 染料はタンパク質と反応して、繊維を色づけています。
 繊維が動物性(例:羊毛や絹)なのか植物性(綿や麻)なのかで異なります。
 今回使用する布は綿です。綿は植物性のため、
 人工的にタンパク質を染みこませて、染まりやすくする必要があります。
 
 なお、合成繊維のポリエステル生地などは染まりませんのでご注意です。

染まりやすくするための助剤。
手軽に用意する場合は、牛乳や豆乳などが挙げられますが、
できるだけ環境負荷が少ないよう、今回は豆乳を使用しました。

成分無調整の豆乳と水を1:1の割合で薄めます。
ハンカチがひたひたになるようにします。
何度か菜箸で動かしながら、30分浸します。

その後、手でしっかりと絞り(脱水機を使う場合は約30秒)、日当たりの良いところで乾かします。タンパク質の豆乳や牛乳は腐りやすいので、晴れた日に手早く行うことをおすすめします。

たんぱく処理後、水洗いをするとせっかく浸したタンパク質が落ちてしまいます。また干す際には、しわがあると染めムラの原因になります。しわを伸ばして乾燥させましょう。


【 当 日 】

1.タマネギの皮を煮出して染液をつくる

タマネギの皮と、ひたひたになるくらいの水を鍋に入れ、沸騰後30分煮出します。


2.ハンカチに模様をつける

その間にハンカチに模様をつけます。
たこ糸、麻紐、輪ゴム、ビー玉などで自由にしぼりを入れます。


3.タマネギの皮を取り除く

1で煮出してつくった染液をこして、タマネギの皮を取り除きます。


4.染液にハンカチを入れて煮る

染液にハンカチを入れ、20~30分ほど煮ます。

このとき、染め液が沸騰しないようにするのがポイントです。
染めムラにならないよう、さいばしで時々動かしながら煮ます。


5.媒染液を作る

その間に、媒染液を作ります。
大さじ1の焼ミョウバンを、少量の熱いお湯で溶かします。
焼ミョウバンが溶けたら、
ハンカチが浸るくらいの水(今回は約1リットル)を足します。


6.4で煮たハンカチを水洗いする

 染液で30分ほど煮たハンカチを取り出し、水洗いをします。
 絞る際に、強くねじると、その通りにムラができるので
 両手でやさしく押すようにして水気を切ります。


7.ハンカチを5の媒染液に浸す(30分)

絞ったハンカチを、5.で作った媒染液(ミョウバン液)に20~30分ほど浸けます。時々さいばしで、ユラユラさせながら浸けていると、くすんだ茶色だったハンカチが、じわじわと明るい黄色になっていきます。


8.媒染液に浸したハンカチを水洗い流す

ハンカチにつけたたこ糸や麻紐をはずして、水洗いします。
よく絞って、陰干ししたら完成です。


9.お好みでアイロンをかける

乾燥後、アイロンをかけて整えるのもおすすめです。

草木染めは天然染料ゆえ、色落ち・変色・退色は避けられません。

ですが、用途や洗い方を工夫したり、繰り返し染め重ねしたりなど、
合成染料で染めた既製品にはない楽しみ方があると思います。

そして、草木染めだから味わえる、優しくて柔らかい色あいがあります。

ぜひ、体感・体験してみてください♪


こちらもおすすめ

草木染めっておもしろい?! 合成染料と天然染料について

(SNIクラフト倶楽部)

そうじ用具に新しい生命を吹き込む

 

職場にあるシュロのほうきたち
だいぶ年季が入り、毛先が曲がって使いづらくなったほうき。
ここ数週間、だんだんと使われなくなっていき、役目を終えそうな雰囲気がありました。

とうとう、破棄して新しいものに替えようか、という話が出ました。

買い換えを思案していた頃、備品管理を行っている部署の先輩にちょうどお話しをする機会がありました。

「毛先を切ったら、まだまだ使えるわよ~」

と優しく教えてもらい、

「そうか!!!!!!」とハッとするものがありました。

早速教えてもらった通りに
仕事の合間をぬって、外のデッキでハサミを入れていきます。
ちょき、ちょき、ちょき、ちょき・・・。

シュロは固くて、なかなか作業は進みません。

それでも切っているうちに、
なんだか心があたたかくなっていく感覚がしました。

毎週一緒にそうじをする職場の方々への感謝

まだ使えるのに破棄しようとして申し訳ない気持ち、

ほうきに絡みついているホコリや髪の毛さえも、ほうきが私たちの手の代わりとなって働いてくれているんだ、とありがたく感じてくるのでした。

決してまっすぐではないし、短くなってもいい、
そんな思いで整えてみること2日間。

できたー!!

使いやすくなって、まだまだ使えるようになりました。

道具をていねいにメンテナンスし、新しい生命を吹き込む。

シュロの切った毛先の束は、薪ストーブのたき付けで再利用。

大量生産、大量消費の時代ですが、

1人の先輩の言葉をきっかけに、

捨てること無く、むだもでず、新しく買うこともなく、
大切に使うことができました。

そしていちばん喜んでいるのは、
この「気づき」をもらったわたし自身の心なのでした。

(SNIクラフト倶楽部 松尾純子)

SNIクラフト倶楽部・展示コーナーが完成♪

【*SNIクラフト倶楽部の展示コーナー誕生*】

生長の家国際本部では、
生長の家の取り組みや
“森の中のオフィス”の機能などを紹介させていただくため、
希望者をお迎えして見学案内(要予約:代表番号 0551-45-7777)を
おこなっています。

※生長の家“森の中のオフィス”の解説は、このページの下に動画を掲載しております。


見学案内の中では、
低炭素のライフスタイル実践として、
生長の家プロジェクト型組織(PBS)の活動も紹介しています。

そのひとつとして、SNIクラフト倶楽部は、
作品から展示台に至るまで、すべて「手作り」にこだわり、

クラフト倶楽部のメンバーに沢山の協力をいただきながら、
事務局員メンバーとも話し合いを重ね、
時間をかけて展示コーナーを少しずつていねいに作り上げていきました。

【*作品紹介*】

ここに展示してある作品は
『SNIクラフト倶楽部』のメンバーが手づくりしたものです。

クラフトに使う材料も
「自然素材」「自然由来の製品」
使うようにしています。
糸、毛糸、木材、竹材、植物染料などを使用し、
化石燃料由来のものはできるだけ使用していません。(再利用品は除く)

↓ 写真をクリックすると作品の全体が見られます


【*展示台*】

展示台に使用する材料も、
より自然度の高い、環境に負荷の少ないものを選んでいます。

コルクボードは、国産針葉樹の合板に天然コルクシートを貼り付けました。
棚の支柱には、桜の枝を使用しています。


【*こぼれ話*】

展示作品にはランプシェードがあります。
“森の中のオフィス”は全て自然エネルギーですが、
見学の皆様の参考になるように、
あえて個別の発電にし、
小さな太陽光パネルで発電して蓄電池(*1)に貯め、LEDランプを光らせる方法を採用しました。
*1:今回使用の蓄電池 http://sugoibattery.com/

【*おわりに*】

手作りのあたたかみ
自然により近い作品が醸し出す雰囲気からか
この展示コーナー自体、
ゆるやかな空気をまとっていて、やさしい気持ちにしてくれます。

内容は、毎年3月に更新されていく予定です。
その際はまたこちらで報告いたしますので、ぜひ楽しみにされてください♪

(SNIクラフト倶楽部)


生長の家“森の中のオフィス物語”

生長の家“森の中のオフィス” についてはコチラ

素材探しから得られること

 私達、クラフト倶楽部のメンバーは、より自然度の高い素材を選んで、手づくりをしています。この素材を選ぶことには、ある程度の苦労が伴いますが、それと共に大きな喜びもあります。

  まず、クラフト倶楽部の活動として、より良い素材選びを簡単に表現すると

「より自然なもの、近くで出来たもの、使うことで枯渇しないもの」

といえると思います。

 すぐに思いつくのは、自然から直接分けてもらう小枝や木の実、貝殻などだと思います。森や海岸はクラフト素材の宝庫ですね。

 その一方、購入する場合は、なかなか難しく、多くの商品が並んでいても、石油由来の製品や海外で作られ輸入されているものが多いことをあらためて実感させられます。


  そのような中でも、あきらめずに探せば、パズルのピースがぴったりはまるような素晴らしい素材に出会えることがあります。そして、その“つくり手”の方々の多くは、地道だけれども、とても丁寧なお仕事をされています。


 これまで出会った“つくり手”には、山林育成のため地元木材を取り扱う製材所( * 1)、羊毛の加工と自然染色を自ら行うお店( * 2)、有機栽培された綿の織物業者( * 3)、環境にやさしい素材のみで絵の具を製造する工場( * 4)、日本ミツバチの育成をされている養蜂所( * 5)など、本当に素晴らしい方々がいらっしゃいました。

 クラフトを通してこのような方々とつながりができ、私たちの活動にも共感や賞賛の声をいただいています。

 さらに、“つくり手”の顔を知ることで、素材を大切に使う意識がわいてきます。尋ねれば、経験からのアドバイスをもらえ、作品の背景として参加者にも伝えることができますし、購入することで“つくり手”を応援することにもなります。

このように、「簡単に購入しよう」と考えていると難しく感じる素材探しですが、私達が意識を広げて求めていけば、きっとそこには、素晴らしい出会いや学びが待っていて、私達の活動が拡がっていくきっかけにもなっていくと考えています。


(SNIクラフト倶楽部 部長 吉田憲司)


*1 「樋口製材」https://higuchi-seizai.com/
*2 「アナンダ」https://www.ananda.jp/index.htm
*3 「ミュッター」http://www.mothers-mutter.com/html/newpage.html?code=32
*4 「株式会社まっち」https://match-japan.com/JP/index.html
*5 「あじわい百花蜜」http://www13.plala.or.jp/ajiwaihyakkamitu/index.html

草木染めっておもしろい!?

突然ですが、今あなたが着ている洋服は、何色でしょうか。
そして、どのような染料でその洋服を染めているかご存じでしょうか。

今回ピックアップするのは、「草木染め」です。
「自然染め」「天然染め」「植物染め」とも呼ばれています。
自然界にある天然のもの、たとえば花、草、野菜、木の実など、
身近にあるもので布を染めます。
草木を煮出してつくった染液に、天然素材の糸や布などの材料
《コットン(綿)やシルク(絹)、ウール(羊毛)》などを入れて染めるのです。

ちなみに、草木染めという言葉は、比較的新しい言葉で、
名付け親の山崎斌さんは、昭和7年に「草木染」という言葉を一度商標登録しましたが、
「草木染を愛する人に自由に使用してもらいたい」という思いから商標権を放棄された、と言われています。


染色文化の歴史

染色文化の歴史は古く、原始的な手法での染色は、
一説によるとエジプトのピラミッドでは4000年以上も前に、
中国では紀元前3000年頃、ヨーロッパやインドでは紀元前2500年頃から行われていたことが分かっています。
日本では、紀元前1400年頃から植物や貝紫などで染色が行われてきたとされています。


合成染料と天然染料

1856年、約160年前にロンドンにて「合成染料(化学染料)」が世界ではじめて誕生します。
天然染料よりも安価で手軽な合成染料は、世界の染色技術の主流となっていきます。
現在も流通している商品の9割以上が「合成染料染め」になります。
おそらく、みなさんが持っている洋服も、合成染料で染められたものが多いのではないでしょうか。

「合成染料」が普及した背景には以下のような理由があります。

1)染料自体の質を安定して供給できる。
 これによって毎回同じ色が染められるようになりました。

2)安価である
 草木染めは植物を育て、収穫し、煮煎じるなど、とても手間がかかります。収穫や栽培、人件費、光熱費もいれるとそのコストは合成染料の100倍以上とも言われます。

3)長期保存ができる
 合成染料にも保存期限が有りますが、たいていは2-3年程保存ができます。草木染めの場合、鮮やかな色を染めようとすると採取してすぐに使わなければならないということもあります。また、草木染めは季節によって染められる色も限られてきます。

こういった点から、合成染料が世界で主流となりました。
しかしこれは、あくまでも製作者目線においての「良いこと」です。
安い値段で、同じ色をいつでも染められるので、大量生産に向いているということです。


一方で、「草木染め」の良いところも考えてみます。

1)安全性が高い
化学染料の中には危険なものもあります。
過去に使われていた化学染料で現在は使用を禁止されているものもたくさんあります。
その点、草木染めは自然界の物を使って染めるため、安全です。

2)環境に優しい
染色には水をたくさん使い、染色後に排水します。
合成染料の染織排水は環境汚染の原因となります。
草木染めは植物を煮煎じた物を使うので、熱湯のまま川に流すなどをしなければ環境を傷つけてしまうことはまずありません。

3)複雑な色合いが出せる
人工的に作られる分、安定した色が出る合成染料。
そのため、グラデーションなど微妙なニュアンスの色合いを出す場合、数種類の染料を調合する必要があります。

一方の草木染めは、もともと染料の中に様々な色素が混ざっているため、淡いグラデーションや色をいくつも重ねたような風合いなど、複雑な表現ができるのです。


手仕事の楽しさを知って、買い物を考える。

私たちSNIクラフト倶楽部では、
自然からもらった環境に優しい素材を使って、
少しめんどくさいと思うことも丁寧にクラフトすることを大切にしています。

わたし(松尾)はこの草木染めに初めて挑戦したことで、
手仕事の尊さと、楽しさを再確認することができました。

すべて自分で染めた服や布でなければいけない、ということではなく、
安く、大量に購入した衣服が、どんなプロセスで染めて造られ、
販売されているかを、前よりも知ることができ、
考えて衣服を買うきっかけもになったと思います。

今回タマネギの染液で染めたハンカチ。模様ひとつひとつが違って愛着がわきます

草木染めが楽しいとわかったので、
次はどんな植物や野菜などで染めてみようか、ひとつ楽しみが増えたのでした。


こちらもオススメ

草木染めってどうやってやるの? -タマネギの皮編-

(SNIクラフト倶楽部 松尾純子)

探す・試す・考える 素材にこだわったクラフト

前の記事でもご紹介した
亜麻(リネン)×和紙糸の食器洗いクロス

この手作り食器洗いクロスができるまで、
素材・材料選びから、使い心地の検討まで、
さまざまな苦労があったと教えてくれたのは、
SNIクラフト倶楽部のメンバーでもある
ブランドネーム「手作り雑貨ふわふわ工房」さんこと、近藤弥栄子さん(山梨在住)。

今回は、近藤さんご本人にお話を聞いてみました。

試行錯誤すること約3ヶ月

-この食器洗いクロスを手作りしようと思ったきっかけはなんですか。

近藤:
「全国のSNIクラフト倶楽部の方々が作る自然素材たわしの作品をみて、
エコたわしを作りたいと思ったのが始まりです。
ただ、麻紐は食器やフライパンが傷つかないのかな?と思い、
柔らかい生地を探すことにしました。
近所に手芸用品店がないので、

忙しい仕事・育児・家事の合間をぬってインターネットで生地を探す日々が続きました。」

-これまでどんな素材を試してみたのでしょうか。

近藤:
「最初に購入したのは、国産の麻100%の生地で、食器を洗った時に汚れが目立たない緑色を選択しました。(少しお高めの生地)
届いてみると、サラサラの質感でブラウスなどが作れそうな上質なものでした。

でも、せっかく注文したので、一応クロスを作って食器を洗ってみました。目が細かい生地だったので、水を含むとかたくなり、すべらないので、とっても洗いにくいことが判明!しかも、緑色の麻の繊維が出てきて、これは諦めました。」

-なるほど。

近藤:
「その後もネットで引き続き探し、次に注文したのは、THE麻!という感じのジュード生地です。こちらは、はさみでカットすると繊維がホロホロとほどけてきて、縫う時でさえも扱いにくく、
食器洗いにしたら、かたすぎて、器やコップの隅が全く洗えないので、こちらも諦めました。
(現在は、布の4辺を三つ折りに折り込み、 ぼろぼろとほつれないように縫って、シンクや排水溝を洗うクロスとして活躍しています)」

近藤:
「それでも諦めきれず、布製の食器洗いなどを検索していると、タテ糸は亜麻(リネン)、ヨコ糸は和紙のワッフル生地を発見しました。
お試し用に生地を購入して、早速作ってみると、今までで一番いい! 
主人の感想も洗いやすい!と高評価でした。」
(ただメーカーに問い合わせた所、製造は日本国内ですが、

リネン繊維と、和紙糸にする繊維は国産では無いため、輸入しているとのことです。)

-聞くところによると、ミシン糸もこだわったらしいですね。

近藤:
「そうなんです。普段使っているミシン糸をよーく見ると、
ポリエステルと表記されていて。
糸まで気にしていなかったと気づき、
日本製のコットンのミシン糸に変え、
すべて自然素材の材料を使うことを心がけました。」

-近藤さん、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。


1人の行動が、まわりにも良い影響が

様々な生地や素材を試しては考えること、なんと約3ヶ月間。

この食器洗いクロス、
今では、生長の家“森の中のオフィス”内にある「SHOPこもれび」でも販売されるほか、

地元のワークショップ等で、
近藤さん自ら知人友人に作り方をにレクチャーするなど、
自然素材の食器洗いクロスの輪が、徐々に拡がっています。

また、普段インターネット上で交流する
SNIクラフト倶楽部の仲間も興味を持ち、
「自分も作ってみたい」という声も上がっています。

時間をかけ、試して作る。そして使い心地のよいものが良い

地球の未来を守りたい。
だから自然に優しい素材にこだわりたい。

そして、毎日使うものだから、使い心地がよく、
お手入れもしやすいものが良い-

地球環境の目線にも、
使う人の目線にも立った、アイディアが込められたクラフト。

そのために、時間をかけて何度も作り、試しては考え、再度作ってみる。
この繰り返しが、自然にも人にも優しいクラフトに繋がっていく-

お話を聞き、そう改めて感じるのでした。

(SNIクラフト倶楽部事務局 松尾純子)