―真理探究への政治の介入に反対する―(日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する声明)

ニュースリリース

2020.10.14

― 真理探究への政治の介入に反対する ―
(日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する声明)

今般、安倍元首相の政策を引き継ぐとして総理大臣となった菅義偉氏は、日本学術会議が推薦した新しい会員候補のうち6人の任命を拒否しました。拒否された6人は、刑事法学、憲法学、行政法学、政治学、歴史学、キリスト教学など、いずれも人文科学の領域で顕著な業績をもつ方々です。同会議の会員となるためには、「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦する」(日本学術会議法第17条)ことになっています。

自然科学の分野と異なり、人文科学の分野では、時代や社会を超えて「真理」として認められたものが数多くあるとは必ずしも言えません。しかし、だからこそ様々な立場の研究者が、自由な発想で多方面から研究を進め、議論を深めていくことで、より「真理に近い」研究成果を見出していく営みが不可欠です。そのような専門的な営みの中では、何が「優れている」かを門外漢が決めてはならないし、ましてや時の為政者の判断によって、研究者間の合意を反故にするような行為があってはなりません。

生長の家は宗教ですが、真理を追究し、真理を現実世界にもたらすことで、人類と地球社会とを「より善なる方向」へ近づけるという目的では、科学と変わらないと考えます。

かつての宗教と政治が未分化の時代には、科学者が発見した真理が、宗教の教えと矛盾するという理由で、“宗教政治”によって真理が歪められたという苦い歴史を人類は共有しています。21世紀の今日でも、一部の国では、科学的真理を認めない政治家によって国政が歪められ、多くの国民が犠牲になるという残念な例が散見されます。また、科学的真理を認めない宗教があることも事実です。しかし、その中にあっても、20世紀に多くの悲惨な戦争から学んだはずの日本が、再び国権によって真理探究の動向を操作しようという誤った方向に進むとしたら、私たちは声を上げて反対せざるを得ません。今の時代、科学的真理の探究を操作しようとする政治が、宗教的真理の探究を尊重するなどということはあり得ないと考えるからです。

現代の議会制民主主義下の内閣総理大臣には、公序良俗を侵す危険がないにもかかわらず、宗教や学問の営みを自分の好みの方向に操作する権限は与えられていません。従って生長の家は、真理探究への為政者の介入に断乎反対します。

2020年10月14日
宗教法人「生長の家」

<電子メールアドレス: info@jp.seicho-no-ie.org