繁栄ストーリー

日本文明は世界を救う “21世紀は日本の出番”【後篇】

2015年4月19日  


筑波大学名誉教授  村上  和雄

村上和雄

極微の空間に書き込まれる膨大な遺伝子情報

私共はヒトの細胞に書き込まれている遺伝子暗号を読むことによって、その謎を解明し、「生物学上のアポロ計画」を達成させました。

けれども私は以前から、もっと凄いことに気づいていました。それは「読む前に書いてあった」ということです。書いてあったから読めるのです。当り前のことですが、これは凄いことだと思います。

では書いたのは誰なのか? 人間でないことは間違いありません。自然が書いたとしか言いようがないのです。

遺伝子の情報量は、1つの細胞に1冊1000頁の大百科事典3000冊分ぐらいあります。大変な情報量ですが、その遺伝子情報を、私達は両親からいただいて、生まれて来るのです。

その遺伝子情報は、1グラムの何分の1のところに書き込まれていると思いますか? ちょっと想像もつかないと思いますから答えを言います。1グラムの2000分の1、ではないですよ、2000億分の1のところに書き込まれているのです。

もう想像を絶する超々狭い空間に、万巻の辞典になるほどの情報が書き込まれていて、しかもそれが60兆もある細胞一つ一つの中で間違いなく働いているのです。

では自然はどうやって書いたのでしょう。私達が知っている自然とは目に見える自然ですね。山とか川とか海という自然。しかしその他に私は、目に見えない自然があると思います。

本日お越しの皆様は違いますが、日本人の多く、あるいは世界の多くの人々は、「目に見えるもの、測定できるもの、お金に換算できるもの」に価値を置いています。しかし、よく考えてみると愛情や生命など、目に見えないものがある。

それらと同じように、万巻の情報を極微の世界に書き込み、しかもそれを間違いなく働かしている自然は、目には見えないのです。今日まで私達は、そういう“目には見えない偉大なる力”を打ち消して来たのではないかと思うのです。

それは確かに存在する。だから私達は毎日、生きているのです。そう考えると、毎日生きているだけでも奇蹟的なことで、ただごとではないということなのです。

全ての生物は、みな繋がっている

今から60年前に、医学生物学上最大の発見がなされました。それは遺伝子の構造が解ったということです。その結果、遺伝子の研究は急激な進歩を遂げ、そのことから、もの凄いことが解り出しました。

これから私の言うことを、できたら憶えておいてください。

全ての生物、全ての微生物も、全ての昆虫も、全ての植物も、人を含めた全ての動物も、そして、今生きているものだけではなく、38億年前から今日までに生まれてきた全ての生物も、これから生まれる全ての生物も、全く同じ遺伝子暗号を持っているのです。しかも遺伝子暗号のみでなく、その材料も、エネルギーも同じなのです。つまり、全ての生物は繋がっているということが、科学の言葉で解り出したということです。

だから、私達がお世話になっている大腸菌でも、人の遺伝子暗号を理解することができるし、人のホルモンやタンパク、酵素、インシュリンなどをつくることができる。

このことは、環境問題を考える上で、とても重要なことだと思っております。万物の霊長といわれる私達は、人間のみならず、全ての生物のことまで考えなければならないということです。

しかし、大腸菌が、人のホルモンや酵素、タンパクをつくることができても、全世界の学者が束になっても、未だに大腸菌一匹つくれません。何故つくれないのか? 何故大腸菌は生きているのか? まだ殆ど知られていません。遺伝子暗号が解読され、材料についてもかなり解ってきているのでその材料を集めることはできる。しかし、生きた生命はつくれないのです。

生と死の情報がペアで働き合っている

だから生きているということが、どんなに凄いことか、お解りいただけると思いますが、まして人間ですよ。人間は60兆の細胞を持つと言われますが、60兆という数字は、現在の地球上の人類の約9000倍ですよ。私達の体の中には、地球人口の約9000倍の細胞が集って働いているのです。

細胞は生きているから、生命がある。しかし何故か細胞同士の戦争は起らない。見事ですね。細胞は物凄い速さで入れ替わっています。速い細胞は1日で完全に入れ替わっています。「お変わりありませんか?」じゃなくて、日替わりランチみたいに入れ替わっている(笑い)。

何故入れ替わるのかと言いますと、見事に死んでいるからです。細胞はプログラム通りに死んでいる。だから新しい細胞が生まれてくることができる。つまり生と死がペアになって循環しているということです。

死は敗北だと考えている人がいますが、本当に死が敗北だとすると、人は皆死にますから、人生は全て敗北で終わりです。しかし、そんなことはない。生と死はペアでちゃんと働いている。だから死は全くの自然で、死というものがなければ大変なことになる。寝たきりと認知症ばかりでもうどうしようもなくなる。見事に死んでいるから、見事に生まれてくることができるのです。

細胞の中には、死ぬための情報と、生きるための情報が共存しているわけです。それが生きているということです。

人の内臓を構成するそれぞれの細胞は、自分が受け持った臓器の働きをひたすら遂行することで他の臓器を助けています。そうしなければ臓器は機能しなくなります。心臓は一生ポンプ作業を続けています。疲れたから肝臓に代わってくれとも言わない。一生自分の役割を演じ切って、それが皆のために役立っている。

お医者さんはそれは自律神経がやっていると言われるかもしれません。では自律神経を動かしているものは何ですか? と問うても何も解らないのです。

このように細胞同士は見事な助け合いをしています。私は細胞の中の遺伝子には、他の細胞を助ける“利他的な遺伝子”があると思っております。これが21世紀には見つかるのです。できれば私共が見つけたいと思っていますが。とにかく生きているということは、ただごとではなく、もの凄いことなのです。

丹精を込めてつくられた私達

人はよく簡単に「子供をつくる」と言いますが、私はその言い方に抵抗を感じていました。カビ1つつくれない人間に、どうして人間の赤ちゃんがつくれますか? 確かに受精卵をつくるところは手助けをしますが。

しかし1個の受精卵から、約38週の間に何十兆の細胞からなる赤ちゃんをつくるプログラムを書いたのは、親ではないですよ。親はきっかけを与え、栄養を与えただけで、38週の間に、生物の歴史の38億年を遡って、一挙に人になって行くのです。魚のような時もある、そこで終ってしまうと流産してしまうことになる。

赤ちゃんは人になるまでに、38億年を38週の物凄いスピードで駆け抜けるのです。だからお母さんの一週間は、胎児の1億年であり、一日が約1400万年にもなるのです。だから母親が一日酔っ払うと、胎児は約1400万年酔っ払うことになってしまう。

だから生まれた赤ちゃんは、大自然が、私はそれを生命の元の親(サムシング・グレート)と言っておりますが、大自然の偉大なる力が丹精を込めてつくり上げ、38億年の歴史を背負って生れて来た、サムシング・グレートの苦労の結晶なのです。まさに“天からの授かりもの”です。

サムシング・グレートにとって私達全ては、サムシング・グレートの子供です。だから可愛い自分の子供達に、差別などつけるわけがない。

人は皆、99.5パーセント同じ遺伝子を持って生れて来ている。だから私達はそろそろ他と比較することを止めて、自分に与えられた可能性、自分にしかない花をどうやって咲かせるかを考えて生きるようにしなければならないと思います(拍手)。

海外の人々に深い感動を与えた日本人

私はこの数年、毎年海外に行っています。その度に諸外国の人々が日本をどう見ているか、とても興味を持って見ています。

例えば2年前にトルコに行きましたが、トルコでは日本人の評価がとても高いのです。

それは皆さんもご存知だと思いますが、123年前の明治23年(1890年)にトルコの軍艦エルトゥールル号が嵐のために紀伊半島の南端で難破して500名以上の人が亡くなるという大惨事がありました。

そのような大変な中、大島村(当時)の人達は命懸けで約70名のトルコの人達を助け、自分達のために保存していた非常用の食糧品まで与えるなどして献身的に看護しました。

そして明治天皇の思し召しによって、日本海軍の軍艦で彼らをイスタンブールまで送り届けたのです。

だからトルコの人達は、日本人に好意を持っているのです。この話は、現在でもトルコの教科書に載っているぐらいです。

それから95年後の昭和60年(1985年)に勃発したイラン・イラク戦争の時のことです。48時間以内にテヘランを脱出しなければならないという緊急の時に、その手立てのない日本人達は途方に暮れました。その時、2機のトルコのチャーター機が、250名に及ぶ日本人を自国のトルコ人に優先して搭乗させてくれ、無事に脱出することができたのです。トルコの人達は自動車を使って陸路で脱出したといいます。それはあのエルトゥールル号遭難の際に自国の仲間を助けてくれた日本人への恩返しだったのです。

それだけでなく、その後、日本は日露戦争に勝利しましたが、それまでロシアに苦しめられて来たトルコの人達は狂喜乱舞し、生まれた子供に「トーゴー」「ノギ」という名をつけ、「トーゴー通り」というストリートまでつくりました。

さらに私は、南米の7カ国も回りましたが、野口ワクチンにより南米での黄熱病が収束したことに感謝して、アルゼンチンとブラジルには「野口英世通り」があり、アンデスの山奥には、公立の「野口英世小学校」があり、記念日には国旗と共に日章旗を掲げている。日本には国旗掲揚に反対する人達がいますが、これほど国際的にも通用しない非常識なことはないと思います(拍手)。

21世紀は日本の出番

最後に、私が一番言いたいことを話します。“21世紀は日本の出番”ということです。

初めにお話ししたダライ・ラマ法王は、「仏教には宗教的な側面と、哲学と科学の側面とがある。だから私は先端科学を勉強したいのだ」と言い、世界の科学者達と対話を何度も行なっています。チベットの僧侶の大学の必修科目には科学が入っている。先日開かれた宗教者と科学者の対話の時には、熱心なチベット仏教徒でチベットの子供達を支援している、ハリウッド・スターのリチャード・ギアさんも参加していました。

50年間も中国に迫害されて来たダライ・ラマ法王は、驚くことに「中国は我が師です」と公言しています。ニューヨークではセントラル公園に数万人の人々が集り、厳しい弾圧に耐えて来た彼の平和のメッセージに、真剣に耳を傾けました。

私は今まで「楽しい、嬉しい、喜び、感謝、祈り」などが遺伝子のスイッチをオンにするのだと思って来ましたが、厳しい弾圧や災難でも、その受けとめ方次第では、良い遺伝子のスイッチをオンにするのだと思うようになりました(拍手)。

そのダライ・ラマ法王が私に、「21世紀は日本の出番ですよ」と言われる。私は半信半疑でありましたが、イギリスのBBC放送とアメリカの大学がタイアップして、30カ国の何万という人に「今世界で最も影響を与えているのはどこの国か」というアンケートをしたところ、2012年に日本は一位であったといいます。

その理由は、日本は67年間も戦争していない平和国家であり、教育水準や医療水準も高い。皆保険によって平等に医療が受けられる。治安もよい。国民のマナーがよい。経済大国であり、ノーベル賞受賞者も、全ヨーロッパの受賞者より多い。技術水準が高い、など沢山の理由が挙げられていました。そして「どこの国に生まれたら幸せだと思うか」という質問にも、やはり一位は日本だったそうです(拍手)。

特に今回の大震災では、日本人が本来持っている素晴らしい国民性が随所で見られ、世界中の人々が感動したのです。2万人の人々が亡くなる大惨事でしたが、私はサムシング・グレートが痛切な思いを込めて、日本人に「本来の自己の素晴らしさに目覚めよ!」とメッセージを送っているのだと思えます。このメッセージを生かさなければ、亡くなった方々、被災した方々に、本当に申し訳ないと思うのです。

日本には大きな使命がある。今こそ、そのことに目覚める時であると私は思います(拍手)。

しかし一番の問題は、日本人自身が、日本は優れた国だと思っていないことです。特に高校生が自分は駄目だと思っている率が、外国に比べて日本は非常に高い。子供達に日本人の持つ資質の素晴らしさ、日本の国の素晴らしさをもっと学んでもらい、自信を取り戻してほしいと切に思います(拍手)。

私は今まで「心と遺伝子」のテーマで研究して参りました。しかし、人間には心と体だけでなく、魂というものがあると最近思うようになりました。これは長くなるので話しませんが、肉体が死滅した後も、魂は亡びずに、生き続けて行くのではないかと思っています(拍手)。

東京大学の臨床医学の矢作直樹という先生が『人は死なない』という本を書いておられます。魂の実在を臨床医学の現場で感じて書かれたものです。

私も彼同様、人間の心の奥底には魂があり、それは生き通しているのではないかという観点から、遺伝子との関係を通して研究をして行きたいと思っております。

これからも、今日にいたるまで賜った様々なご恩返しのため、生命の本当の素晴らしさと、もの凄さと、有り難さというものを、科学者の立場から伝えて行きたいと思っております。ご清聴、ありがとうございました(拍手)。

◯「生長の家繁栄ゼミナール」(平成25年2月11日)での講演:国立京都国際会館◯


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