草木染めの愉しみ②

 紅葉した桜の葉で染めることができると知って、早速煮出してみました。すると赤ワインのような濃い色が出ました。私たちがイメージする桜色は花びらの色ですが、桜色に染めるには花びらではなく葉や枝を使います。桜は、枝にも幹にも葉っぱにも、木全体が桜色を持っていることが分かり驚きました。
 さらに、桜は様々な色に化けます。色を鮮やかにし色落ちを防ぐための媒染を行わないと淡い桜色になり、アルミや鉄、銅などの媒染によって、ピンクにもオレンジにも茶色にも変化します。全く同じ条件で染めても、上手くいく時とそうでない時があり、難しいけど面白い。

紅葉した桜落ち葉を煮出す。落とし蓋のように、枝も一緒に。少しの落ち葉で、たくさんの染液ができる
煮出した染液は鮮やかなワイン色になった。「とても魅力的な色で、様々なものを染めてみたくなります」

 また草木染めの楽しさを知ると、白いものを無性に染めたくなります。文具店で和紙を手にした時、「何かで代用できないか?」としばし考えを巡らすと、「障子紙の余りがある!」と閃きました。染めてみたら、とても上手くいきました。不要なものを活かせた時、すごく気持ちいいものです。染めた障子紙を使って、ランチョンマットやポチ袋などを作りました。

水で薄めた染液に、障子紙をしばらく浸す。「障子紙は意外に丈夫で、この後、手で絞っても破れることはありませんでした」
桜の落ち葉で染めた障子紙で作ったポチ袋(右)。左は巨峰の皮で染めたもの。ねずみは自作の消しゴムはんこを押した

(津島昌子・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.124(2020年7月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.48」

※この記事は2020年に執筆したものです