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「食が結ぶ人・地域・自然」(活動事例発表)
・休耕田や耕作放棄地を 利用した米作り ~田舎の魅力と水田の価値とは?~
秋田県 小林誠
本日は中山間地域における水田の価値と、
休耕地や耕作放棄地を利用した米作りについて発表いたします。
私が生長の家を知ることが出来たのは38年前、
どなたかが郵便受けに入れてくれた『生長の家』誌を読んで感動したことです。
中には「人生の主人公は自分であるから、
自分が変われば、世界が変わる」とあったのです。
当時は、1歳だった長男を連れて、
妻と三人で秋田県の北部の農林事務所へ赴任の時でした。
張り切っていた反面、苦労と捉えていたことも多かったのです。
お蔭で勇気をいただき、
苦労を乗り越えられたのは本当にありがたいことでした。
それから、仕事の合間を見ては
秋田市の教化部へ足を運ぶようになったのです。
私の現在の仕事場は、山あいの三ヶ所の沢に散在する水田です。
面積は3ヘクタールほど、その内の約半分は、
退職後に後継者のいない高齢者から譲り受けた田んぼや、
隣接農地の方がより生産条件の良いところに切り替えたために休耕地となった田んぼ、
そして5年以上も作付されずにいたような耕作放棄地を復活している田んぼが占めています。
いずれも谷筋の最上流に位置しています。
そんな中での、米作りの方法は無肥料であり、無農薬です。
また、苗の植え付け間隔を広くし、植え付け本数も少なくし、
苗同士で淘汰・競争させない方向で、
水の力を最大限に活用できるようにしています。
さすがに無肥料ですから、
化学肥料も有機肥料も使わないので低収量です。
しかしながら、経費もエネルギーも少なく、
そして環境にも優しく、水の中でカエルの卵が孵化するなど、
生物多様性も損なわれません。
下流の平地の田んぼでは水を共同で引くので、
こんなやり方はできませんが、
谷筋の一番上の田んぼだから、
きれいな水を沢から自分で引いて、自由にできるのが魅力です。
自然任せの収量と味覚、
そんな自然農法・天然農法で、
生産効率の低い田んぼを守っていけたらと取り組んでいます。
平成26年の米作りはまさにその通りの実施でした。
結果は、見事に雑草に養分を取られて雑草の勝ち。
原因は、前年に取り組んだばかりの
耕作放棄地の復活田と休耕地の作付けでは田んぼの整備状態が悪く、
田んぼの水平もとれず、水持ちもできず、
雑草には好都合の環境になったのです。
動力の五条の除草機を何度も掛けたものの間に合わず、
収穫は通常の半分にも満たないものでした。
しかし、収穫量とは別の目標・効果がありますので、
納得の結果でした。
私は山あいの小さな兼業農家に育ち、
やがて田んぼを受け継いで土日農業をしながら、
6年前までは県の農林事務所で、
農業基盤整備の仕事をしてきました。
そんな中で、
中山間地域などに増えていく耕作放棄地は気になるところでした。
中山間地域とは地形勾配が100分の1から20分の1の緩い傾斜のある地域のことで、
平地の田んぼと比べれば生産条件は厳しく、
整備状態も投資効率が低いことから遅れていたのです。
今の米作りは、
大規模化、集積化により効率よく生産することが求められていますが、
一方でまた、水田の多面的な機能も少しずつ重視されるようになってきていました。
そんなことから、退職後は専業農家になって
身近にある生産効率の低いと言われる田んぼを繋いでいこうと考えたのです。
それに谷筋の田んぼには、平地にある同じような形の田んぼよりも、
それぞれに個性的な景観の中で田んぼ作りができて楽しいのです。
それでは次に、水田が持つと言われる多面的機能を挙げてみます。
まず、土地の面からは、
荒れないことから土砂崩壊を防止します。
水の面では、豪雨などを一時的にストックし洪水を防ぐとともに、
地下水として川に戻り、河川流量を安定させます。
また、生態系も育み水質も浄化します。
文化的な面からは、稲作文化の継承、里山景観による癒しの効果や、
子どもたちの自然体験や学習体験の場にもなります。
さて、日本は昭和30年の木材の輸入自由化以降、
国産材の利用量が大幅に減って、山は荒廃、
また昭和45年からの米余り現象による減反対策が長く続いた結果、
耕作放棄が進んだと言われています。
この山と田んぼの二つの変化は、
日本の農業の伝統文化や農村の原風景、
自然環境や生態系にも大きな影響を与えています。
そんな状況下にありますが、
最近は、この水田の多面的機能がクローズアップされ、
いろいろの事業や取り組みに反映されてきています。
また、水田の利用率も主食米としての生産量には制限があるものの、
飼料用米や加工用米、備蓄米など、
100パーセント利用できるようになったことは嬉しいことです。
私は、耕作放棄地や休耕地を復活させて里山の自然景観を守りたい。
そして田舎にいても発想を変えれば、大切なものがたくさんあって、
ここにこそ存在する魅力や価値を後世に繋いでいきたい。
このような思いを、生長の家の教えに学びながら、
小さい狭い範囲ですが、
自然と調和した農業、多面的機能を活かした農業を展開していくことが、
私の人生の心の指針である生長の家への恩返しだと思っております。
(平成27年度の「相愛会・栄える会合同全国幹部研鑽会」の活動事例発表、2015.04.28)