布マスクは代用品じゃなくて、これからの主役だ

みなさんこんにちは。
SNIクラフト倶楽部の松尾純子です。
2020年1月末から世界各地で流行が始まった、新型コロナウイルス感染症。
日本では5月末に緊急事態宣言が解除され、感染拡大防止の対策をしながら、
仕事や学校、日常生活が再開されています。
しかし7月上旬現在、再び東京で100名越えの感染者が確認されたり、世界では感染拡大が止まらず、
世界中で1100万人以上の人が感染し、52万人以上が亡くなっています。(参照:WHO世界保健機構より)


日常生活で必需品となったマスクですが、
一時、不織布が主流の使い捨てマスクの生産が需要に追いつかず、
マスク不足の時期もありました。
そんな中で、SNIクラフト倶楽部の多くのメンバーが取り組んだように、
世の中では「ないなら作ろう」「洗って繰り返し使える」と、
綿などの自然素材で布マスクを手作りする人、また繰り返し使えるマスクを購入する人が増えてきました。

しかし現在(7月)においては、マスク不足の時期から一転。
「布マスクは、あくまでも代用品。 安く使い捨てできるマスクが手に入るなら、こっちを使う。」

不織布の使い捨てマスクの供給が増え、布マスクを使っていた人も、使い捨てマスクに変える人もいらっしゃるかと思います。

この記事は決して使い捨てマスクを否定するものではありません。
ですが、この新型コロナウイルスの問題や、使い捨てマスクによって起きている海洋ゴミ問題と、わたしたち人間一人ひとりの意識や行動との関係について触れながら、 繰り返し使える布マスクが、これからの主役になってほしいと願いを込め、 ブログを綴りたいと思います。


1.お店に戻ってきた不織布マスク

1月下旬から使い捨てマスクが手に入らず、
布マスクを手作りして使っている人、
お店やネットで布マスクを購入する人、
使い捨てマスクを洗って消毒し、数回使っている人など、
自分のせきやくしゃみ、会話における飛沫感染を防止する目的で、
マスク着用するために、さまざまな工夫で感染拡大防止に努めていました。

日本においては、国内の各企業の新規参入や、4月中旬ごろより海外からの輸入再開により、
徐々に店頭に不織布マスクが並ぶようになりました。
以前に比べ、非常に高額だった不織布マスクも、7月上旬現在は値崩れしているようです。

一方で、お店で格安でマスクが手に入るようになってからは、
それまで布マスクを使っていた人も、便利・手軽・安いという理由で、
次第に使い捨てマスクを利用するようになった人も多いのではないでしょうか。


2.海を漂う人間が捨てたマスクたち

世界全体で拡大を続ける新型コロナウイルス感染症。
それに伴い、世界中でマスクの需要が高まりました。
その一方で、世界各地の海中で、捨てられたマスクのゴミが漂流し、
生態系に悪影響を及ぼしています。

使い捨てマスクが海に漂流 生態系に新たな脅威 (朝日新聞GLOBE 2020年3月13日)
マスクが海を汚す… 使用増加でポイ捨ても増加 (ロイター2020年6月10日)

記事によりますと、マスクやゴム手袋といった、 新型コロナウイルスの感染を防ぐため使われたとみられるものが 多数見つかるようになったといいます。

これらは、海洋中のプラスチックゴミなどと同じで、環境に影響を与えます。
一般に広く使用されているサージカルマスクは「紙マスク」とも呼ばれますが、
実は「紙」ではなく、主な材質はポリプロピレンという「プラスチック」です。

フランスのNPO・Opération Mer Propreの創始者ロンバール・ローラン氏はこう言います。
「マスクが分解されるまで、300年から500年くらいかかると言われています。環境に長期的な影響があり、分解されて食物連鎖の過程に入り、最終的に人間が食べてしまうのです」

(引用:TBSニュース【SDGs×コロナ後の世界】マスク普及で“不都合な真実”も


3.コロナ禍での気づき

人類の誕生とともに感染症との闘いの歴史が始まったといわれ、中世ヨーロッパにおいて人口の3分の1が死亡したといわれるペスト。世界中で5億人以上の者が感染し、死亡者数が2,000万人とも4,000万人ともいわれる1900年代以降インフルエンザの流行など、感染症は多くの人類の命を奪ってきました*1。

しかし感染症の歴史と人類・文明の関係は、人間が自然や動物を自己中心的に利用し、より至福な便利な文明生活を追求してきた結果、感染流行を繰り返してきたという研究結果もあります。 * 2
また、産業革命以降、とりわけ20世紀以降、人間による「開発」「発展」という名の自然への介入は、それまでとは比較にならない規模と速度で自然破壊がすすみ、それによって引き起こされた感染症が数多くあります。 * 3

根本的に、私たち人間ひとりひとりが、便利で効率優先な、大量生産大量消費のサイクルの矛盾・問題点に気がつき、自然や他の動植物を、人間の好きなままに酷使するような価値観・生き方を変えない限り、問題は繰り返すと思います。

2020年、世界中で大流行した新型コロナウイルスの問題から、
私たちは生き方を変えていくことを学ばなければいけない、そう思うのです。


4.布マスクは代用品じゃない。これからの主役だ

先にも述べましたが、決して、使い捨てマスク自体を否定したいのではありません。 (使い捨てマスクが必要な仕事やシチュエーションもあると思います)

使い捨てできるマスクが手に入らなかった2月以降、
不便であっても様々な手段でマスクの代わりになるものを使う人が多くいました。

しかし再び使い捨てマスクを購入できるようになったら、
また使い捨て文化に戻ってしまう風潮を見て、矛盾を感じていました。

布マスクを使う等、一見不便に思えるこの経験を生かして、
環境問題や次世代の地球へ意識をむけ、
持続可能な生活スタイルを続けてみませんか。

「布マスクは代用品じゃない。むしろこれからの主役になってほしい。」
---街で布マスクをつけている人達を見て勇気をもらい、
この思いが更に広がるようにと、そう願うのでした。

(SNIクラフト倶楽部 松尾純子)


参照:
*1:人類と感染症の歴史 – 厚生労働省サイト
*2:「文明と伝染病:その関連の歴史」(大谷明・国立感染症研究所名誉所員)
*3:『感染症と文明-共生への道』(山本太郎・著、岩波新書)