2021/03/07
本欄の1月31日の記事「自然エネルギーの利用を巡る動き急!」の続編です。
1月31日の記事「自然エネルギーの利用を巡る動き急!」
皆様は、「気候非常事態宣言」なるものをご存じでしょうか。この宣言は、「国や都市、地方政府などの行政機関が、気候変動への危機について非常事態宣言を行うことによって、気候変動へ政策立案、計画、キャンペーンなどの対応を優先的にとるものである」(ウィキペディア)と説明されています。
同宣言は、地球温暖化への危機感の高まりを受けて、2016年、オーストラリアのデアビン市で初めて決議され、世界で急速に波及したものです。国家単位ではイギリス、フランス、カナダなどが宣言しており、日本は2020年11月に国会(衆参両院)で採択されました。国内の自治体では、2019年9月に長崎県壱岐市市議会で同宣言が採択され、東京都、神奈川県、長野県など、56自治体を数えています。
さらに、日本政府が2020年10月に2050年二酸化炭素排出実質ゼロを打ち出したこともあって、相前後して同様の声明を出した地方自治体は、都道府県レベルで33、市町村レベルで289と拡大しています。
例えば、2050年炭素排出実質ゼロ宣言をしている東京都世田谷区では、2020年4月時点で、同区役所本庁舎(第1~第3庁舎)のほか、出張所やまちづくりセンター、地区会館、区民集会所等、計73施設で使用する電力を再生可能エネルギー100%の電力に切り替えています。同区では、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減のため、企業が事業運営で消費する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標に掲げる国際的な取組みである「RE100(Renewable Energy 100%)」に呼応して、「せたがや版RE100」と銘打ち、区と区内の事業者、区民がそれぞれ再生可能エネルギー100%を目指し、他に啓発することを推進しています。
また、同じく2050年炭素排出実質ゼロ宣言をしている長野県では、2020年4月に、「長野県気候危機突破方針」を発表し、実質ゼロの目標達成に向けたスケジュールと具体策を掲げています。それによると、県全体の最終エネルギー使用量を7割削減し(18.6万TJ⇒4.7TJ※)、再生可能エネルギー生産量を3倍以上(1.5万TJ⇒5.4万TJ※)に拡大し、実質ゼロにすることを謳っています。(※2016年度実績に対する2050年度の比較、TJ:テラ・ジュール、1TJ=277778kWh)
このように、ようやく活発化しだした自治体の自然エネルギー拡大の動きに対して、市民の側も積極的に取り組むことが求められています。家庭において省エネに取り組むことはもちろんですが、可能な住宅では、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて自然エネルギーの自給率を高めたり、集合住宅でも再生可能エネルギー100%の電力を供給するPPS(新電力)と契約するなどして、家庭版のRE100を達成することを目指していきたいものです。
(環境共生部 山岡 睦治)