手づくりで、疲れた頭もスッキリ

 道具や衣服を長く大切に使う両親に育てられたことで、専業主婦の時は手づくりやリメイクを当たり前に楽しんでいた。4人の子どもを育てながらフルタイムで働き始めてからは、仕事の責任が重くなるにつれて早出や残業が増え、出来る限り手づくりにこだわりつつも、楽しさを忘れかけていた。
 そんな時、「Tシャツヤーン」のことを知った。これは、古着やTシャツ工場で出た端布を裁断して作った、とてもエコな編み糸だ。しかも、古くなったTシャツなどから、自分で作ることも出来るのも嬉しい。

古着のシャツに細長く切れ込みを入れ、一本の編み糸にしていく。無心になる癒やしのひととき

 家族の着古したTシャツが沢山あったので、新しく生命を与える絶好の機会になった。仕事で遅く帰っても、色やデザインを考えてTシャツを選び、少しの時間でもよく切れるハサミでザクザク切って、編み糸を作る。買ってきたTシャツヤーンも使って、思い描いた通りにバッグなどを編み上げると、仕事で疲れた頭もスッキリして、楽しみながら元気になっている自分を発見した。

Tシャツヤーン(左上)と作品のミニポシェット。色違いで作り、その日の気分に合わせて選んでも楽しい

(Y・S SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.119(2020年2月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.43」

※この記事は2020年に執筆したものです

「こもれびアナザーストーリー」Vol.5

作品名『クラフトテープのカゴ』
作者:あーちゃんのカゴ

―今回お話いただいたのは、『クラフトテープのカゴ』を製作されたあーちゃんのカゴさんです。色とりどりに編まれたカゴは、見ているだけで楽しくなります。日頃からクラフトを楽しんでいる様子が伝わるインタビューとなりました。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品『クラフトテープのカゴ』をつくろうと思いましたか?

 日頃から手づくりすることが好きで、日常生活の中で必要なものを必要なときに、必要なだけつくるようにしています。

 今回の3つのカゴも、「テーブル上の片づけ用」「孫のトイレトレーニングに使う下着入れ用」「かわいいプレゼント用」と、それぞれ用途があってつくったものです。

 使いやすいもの、よろこばれるものを、と思いながらつくりました。

――手づくりは、自分が欲しいと思うサイズ、量をつくることができていいですね。また、使う側のことを考えてつくられたものは、自然と大切に使いたくなると思います。手づくりが物を大事にすることにつながるのですね。


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 材料は、自然素材を選ぶようにしています。クラフトテープを留めるときに使用する接着剤の成分にはプラスチックが入っているため、使用を最小限に抑えることを意識しています。

 また、廃棄するときにCO2をできるだけ出さないものを購入時から選んでいます。

 材料の購入には通販を利用していますが、配送時にかかるCO2に配慮して、購入回数を少なくできるよう、材料をまとめて購入することを心掛けています。

――材料を選ぶこと以外にも、使用する量や購入の仕方、廃棄する段階にも配慮されているのですね。小さいことの積み重ねが重要なのだなと改めて勉強になります。


ものづくりスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 家事の合間に少しずつ、つくります。気分転換になりますし、だんだんと形ができてくると、出来上がりが想像できて楽しみも増していきます。

①「何をつくるか」を決めて、②材料とつくり方の確認をします。
③編む前に、クラフトテープを必要なサイズにカットします
④土台をつくり、⑤本体を編み、⑥仕上げをする、という流れです。

 はじめのうちは小さいものをつくって完成の喜びを味わい、自分にもつくれるという実感を持ちながら、だんだんと大きいものにも挑戦していきました。

(1)クラフトテープを必要なサイズに(クラフトテープは必要な太さに裂くこともできる)
(2)土台づくり(接着剤で固定されるまで、クリップで留める)
(3)本体編みはじめ(ラジオペンチやピンセットは仕上がりを綺麗に、爪楊枝は接着剤を減らすために役立つ)

――完成品を見ると、どのようにつくられたのか、途方もない作業なのではないかと思ってしまいますが、少しずつ出来上がっていくことを楽しみながら、つくられているのですね。
はじめは小さいものからつくってみて、達成感を味わうというのも大切なことだなと思います。


失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 カゴは、部分ごとにつくっていきます。そのため、力の入れ方など編み方を間違えると、出来上がりの形がゆがんでしまったり、高さが違ったりします。そういったことを何回も経験しながら、だんだんコツを掴んでいきました。

 また、つくりながら考え、配色などを変えていくことができ、小さいものから大きなもの、いろいろな編み方にチャレンジしていくのも楽しみのひとつです。

――できなかったことができるようになるよろこびが、あーちゃんのカゴさんの原動力になっているのですね。また、配色や編み方など、奥が深く、色んな楽しみがありますね。

失敗したところをカバーして、同じようでも、ちょっと違うものに。
何個かつくっていくうちに、段々出来上がりに納得できるようになったカゴ

作品のここに注目

作品のことを教えてください

 カゴの形だけでなく、編み方の違いや、つなぎ目の隠し方、色の組み合わせにも注目していただくと作品をより楽しんでいただけると思います。

 カゴづくりは、何を入れるか考えたり、「これにはこんな形のカゴが良いか」と考えながら思うものに近づいていくワクワク感が楽しいです。また、「次はどんなものをつくろうか」と考える意欲も湧いてきます。

(1)作品の内側
ていねいに編まれた手作業の美しさを感じます
(2)作品の裏側

――様々な組み合わせによって、バリエーション豊富に楽しむことができるのですね。作品を見ていると、あーちゃんのカゴさんがワクワクしながらカゴづくりを楽しまれていることが伝わってきます。つくり手の想いが物にも表れるのだなと思いました。


さいごに

 連載5回目となる「こもれび アナザーストーリー」はいかがでしたでしょうか?

 あーちゃんのカゴさんの、カゴづくりに対するワクワクした気持ちが伝わってくるお話しを伺う中で、私もクラフトの魅力を再認識させていただきました。

 使う量や環境に配慮することなど、手づくりだからこそできることがあるなと思いました。

 また、想像する楽しみや、つくったあとの達成感も、手づくりだからこそ味わえる喜びだと思います。

 私も今、自分にできそうなことからやってみたいと思いました。

 次回は、どんなクラフトばなしを聞くことができるのでしょうか?

 どうぞ次回もおたのしみに~♪♪

(聞き手:SNIクラフト倶楽部 松尾富美子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.4
作品名『めぐる季節(刺しゅう)』/ 作者andante

お気に入りをつくってみませんか?

 皆さんは市販のものに満足していますか?

 「デザインは良いけど、使い勝手が」とか、「使い勝手は良いけど、大きさやデザインが」なんていう経験、ありませんか? そんな時は、自分でつくってみることをオススメします。

 私は『日時計日記*』のカバーを作りました。市販品は千円くらいで買えますが、デザインも機能も気に入ったものがなかったのです。家にあった厚紙を芯にして、昔買ったデニムの端切れをかぶせて縫い、違う色のデニムでポケットをつくって、ペンや付箋などを入れられるようにしました。内側には、お気に入りだったシャツの生地を使っています。材料費はゼロ円だけど、すごく気に入ったものができました!

 縫い目は上手とは言えませんが、ひと針ひと針丁寧に縫っています。気に入っていたシャツがちらっと見えるところも工夫しました。今回、設計図から真剣に考えてつくってみて、今まで味わったことのない感動を覚えました。出来上がったカバーだけでなく、製作を通して味わったこの気持ちも、私の大切な宝物になりました。

大好きなデニム生地で、使い勝手もいい。いつまでも使えるような一品に仕上がった

裏地は、デザインが気に入り、7年ほど着ていたカジュアルシャツ。襟元がボロボロになっていたが、何かに使いたいと思い、取ってあった。カバーを開くたびに見ることができ、嬉しいという

『日時計日記』の上下巻2冊が、一緒に入れられるように設計した。持ち歩くには少し重くなったが、『日時計日記』にはスケジュール欄もあるので、2冊セットでカバーに入れて、活用している

* 生長の家白鳩会総裁・谷口純子監修、生長の家刊


(高橋竜矢・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.118(2020年1月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.42」

朝クラフトのすすめ

 「クラフト作りはしたいけど、時間が取れない」という方は多いと思います。

 私は、路線バスの運転士をしていて、毎日12時間以上、長い時は16時間勤務の日もあり、生長の家の活動もしているので、毎朝の15分をクラフト作りの時間にしています。

 もちろん15分では完成しないので、ちょこちょこと作っていきます。一気に完成させたい気持ちを抑えて何日もかけることで、新たなアイデアが湧いてきたり、続きが楽しみになったりするのです。

 毎朝、クラフト作りに没頭することで、さわやかな朝の時間を過ごすことができ、不思議と疲れもイライラもなく、穏やかな心で過ごせることに気がつきました。

 さらに、ものを生かす喜びや、新たないのちを吹き込む感動が得られ、心が豊かになることを感じています。朝クラフトを通して、ここに本当の喜びの生活があるのだと、実感しています。

カレンダーを編み込んで作るリングファイル。
①カレンダーを1cm幅に折って、縦に編む部分と横に編む部分を作る。縦は強度を付けるため、中に厚紙を入れる。(写真の伝票用のリングファイルは、縦はカレンダーの裏面の白にして、横はカレンダーの絵柄を生かしている)

② ①の縦と横を編み込み、縁を切りそろえて、マスキングテープを貼る
③ 適当なサイズのカードリングを2つ取り付けて完成

写真は、カレンダーを再利用して作った紙袋

(高橋竜矢・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.117(2019年12月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.41」

リメイクから始める豊かなクラフト生活

 20代前半の頃、物質的に豊かで、お金さえあれば何でも出来て幸せだと錯覚していました。両親に反抗し、勝手に一人暮らしを始めたものの寂しさが募りました。それを紛らわそうと愛車の改造に、グルメに、ファッションにと、お金を使っていました。気がつけば、高級車1台分の借金を抱えてしまっていたのです。


 借金のため、節約しなければならなくなり、自分で直せるものは自分で直すようになりました。バッグの補修から、友人からいただいたジーンズの裾上げまで、買うよりもはるかに低コストで出来たことが、私の生活を支えました。その後、リメイクは当たり前になり、「立派なクラフト生活だ」と人から言われたことが嬉しくて、SNIクラフト倶楽部に入部しました。そして、鞄の壊れた取っ手を直し、倶楽部のメンバーに紹介すると、多くの方から讃嘆のコメントをいただきました。

取っ手を付け替え、鞄に新しい命が吹き込まれた

鞄はリサイクルショップで購入したもの。取っ手が壊れてしまったので外し、ハトメを付けて、重さが分散するよう工夫することにした

中学生の頃から愛用していた聖経の表紙と箱が傷んだので、張り替えた。高橋さんにとって、リメイクはクラフトの原点


 そのことで、より一層リメイクする楽しさを知り、自分で手を加えたことで愛着が湧き、物を大切に使うようになりました。


(高橋竜矢・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.116(2019年11月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.40」

「こもれびアナザーストーリー」Vol.4

作品名『めぐる季節(刺しゅう)』
作者:andante

――今回、お話いただくのは、やさしい温もりが伝わる細やかな刺しゅうで、お住まいの八ヶ岳の四季(12カ月)を表現された andante(アンダンテ)さんです。日常の中にクラフトのヒントを見つけることができるような、andanteさんならではのお話を伺うことができました。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

 刺しゅうを始めて一年ほどたった頃、本の図案ではなく、オリジナルの作品を作ってみたいと思うようになりました。
 絵を描くことに対して苦手意識があったのですが、小さなモチーフなら描けるのではと、自分の身近な自然を題材に選びました。
 普段の生活のなかで、季節ごとに印象に残っているものをあげていくと次々浮かんできて、その12カ月のモチーフを時計に見立ててデザインしたら面白そうと思いつき、この作品が生まれました。
 12個のモチーフは、庭や散歩道で出会う植物や生きもの、地元の産物など、どれも自分の日常生活と結びついています。

――普段の生活のなかで自然に触れられているからこそのアイデアですね。12カ月の季節と時計の時間が重なるデザイン、本当に素敵です。
 身近にある自然が美しくかわいいものなんだなと改めて感じる作品で、見ているだけでわくわくします。


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 まず、家にあるもので作ることができないか材料を探します。古着を再利用することもあります。
 ちょうどよいものがなくて布や糸などを購入する場合は、綿や麻など天然素材のものを選ぶようにしています。同じような材料で国産のものがあればそちらを選ぶことが多いです。

――家にあるもの、天然素材、国産のもの、と環境に負荷のかからないことを大切にされているのですね。

 刺しゅうの場合は絵の具のように色をまぜることができないので、糸の色数がたくさんあって見ているだけでも楽しいです。
 クラフト倶楽部に入って、ものを無駄にせず大切に使うことをより意識するようになりました。残った糸も、ごく短いもの以外は保管して使っています。お菓子の空き箱に保管していて、秘かに「宝箱」と呼んでいます。

――「宝箱」!呼び方からも大切に使われていることが伝わってきます。そんなふうに大事にされている材料でつくったら、そのモノ自体にも幸運が宿りそうです。まさに「残り物には福がある」ような♪

1)「どこにでもある菓子箱なんですよ」と話されていましたが、色別にきれいにまとめて保管されていて、大切にされていることがよく伝わります。
2)お茶のひとときに使うポットカバーに刺しゅうを施した作品。キルト芯の代わりに古い綿毛布を切って挟まれたとのこと。

3)コースターと鍋つかみは、娘さんが学校で使った巾着を再利用。

モノづくりスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 木の食卓テーブルで、好きな音楽をかけながら作業することが多いです。
 刺しゅうをするときは、つい座りっぱなしになりがちなので、作業の途中で庭に出て家庭菜園の草取りをしたり、同時進行でお豆を煮たりして、ほどよく体を動かすようにしています。
 ときには夜、家事を終えて、時間を気にせず作品に向かうのもホッとする時間です。

――クラフトが生活の中で、リラックスすることにつながっているのですね。また、andanteさんのように、どれかひとつと作業を絞るのではなく、複数のことを合わせることで、身体にも心にもいい影響がありそうです。

1)クラフトがリラックスすることにつながる~手づくりのあたたかみと、心穏やかな時間が写真を通して、伝わってきます。
2)普段使用されている道具。刺しゅうの小物入れはご主人のお母さまからのクリスマスプレゼント。
3)お礼に、そのデザインを取り入れた刺しゅうをして、翌年のクリスマスに贈られたそうです。とても素敵な交流を感じます。

失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 刺しゅうをしている最中に一度、作品にお茶をこぼしたことがありました。半分以上できていたのでとてもショックで、どうしようかと悩みました。
 ふと、友人がブラウスのシミを刺しゅうでカバーしていたのを思い出し、私も図案を少し変え、目立たない色の糸を選んだらシミもわからなくなりました。元のデザインよりかえってよい雰囲気になり、思い出に残っています。

――半分以上、仕上げてきた時間や労力を思うと、本当にショックですね。それでも、どうにかしたいと考えたことやご友人からの知恵に、ご自身のアイデアも加わって、プラスの出来事になっていることが素晴らしいです。

左側の巣の部分にシミがあったとのこと。

刺しゅう糸の代わりに細い麻ひもを巻いてボリュームを出し、大きさを広げる工夫がなされている。刺しゅうされている植物はリネンの原料となる亜麻(フラックス)。作品はSNIクラフト倶楽部のFacebookグループ(メンバー限定の非公開グループ)でも紹介されている。

~こぼれ話~

お話ししている中で、感謝や気持ちを伝えるときにもクラフトが身近にある方なのだと感じました。心のこもった作品の数々。見ているだけで癒やされます。

1)日本ミツバチを飼っている友人に贈った麻のマット
2)家庭菜園のお野菜をくださった方へのお礼状(紙刺しゅう)


作品のここに注目

今回、展示された作品について教えてください。

 刺しゅうをしていて一番難しいのは、昆虫や動物などの生きものです。目の付け方や触覚の角度でも表情がかわるので、リスやミツバチ、チョウなどは何度もやり直しました。それだけに愛着があります。
 8時の位置にいるチョウはアサギマダラというチョウです。1000キロ以上も海を越えて渡りをする「旅するチョウ」で、初めて八ヶ岳でこのチョウを見た時、大きな羽をひろげてふんわり優雅に飛ぶ姿に目を奪われました。その時の感動を刺しゅうにしました。
 リスは冬支度のころやってきて、わが家の庭の木の根元にも木の実を埋めていきます。かわいらしさが表現できていればうれしいです。

――本当にどのモチーフもかわいらしく、愛らしく、見ていて心が和みます。実体験として目にして、感じたことが刺しゅうにも表れているように思います。また、刺しゅうの刺し方でいきものの表情が変わるという話は驚きでした。何度もやり直しをしたと話されるように、作品を見ていると、そのひとつひとつに心を込めて刺しゅうされたことが伝わってきます。


さいごに

 作品のアイデアや失敗したときのエピソードなど、日常からヒントを得ていることを感じました。

 「宝箱」と呼ぶ箱に、残った糸を大切に保管されているように、一つひとつのモノや出来事を大切にされていることが、素敵な作品へとつながっているのだと思います。
 感じたことをクラフトに活かしてみる、まずは家にあるものでつくってみる、など取り入れやすそうなことから、一つひとつ行動に移されていますね。日常の中にヒントがあると思うと、より楽しいクラフトの時間を過ごすことができそうです。

 素敵な作品の背景には、必ず興味深いお話があり、毎回よろこびや発見があって、楽しい時間を過ごさせていただいています。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?
 次回もどうぞおたのしみに~♪♪

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾富美子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.3
作品名『竹皮の弁当箱』/ 作者:つしま屋


「こもれびアナザーストーリー」Vol.3

作品名『竹皮の弁当箱』 作者つしま屋

――今回お話しいただくのは、竹皮の弁当箱をつくられた、つしま屋さんです。
森や山に行って素材を自ら採り、その自然素材と対話する気持ちでクラフトをしているそうです。つくりたいと思ったきっかけや、材料探しをはじめあらゆるプロセスを大切にしているつしま屋さんならではのインタビューとなりました。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

 脱プラ(脱プラスチック)を意識しだしてから、竹の皮が急に気になりだしたのがきっかけでした。春先のたけのこの時期の皮ではなく、5月末頃の若竹のぐんと伸びる時期に、大きくなっていく竹に張りついていられなくなり、はらりと脱ぎ捨てられる竹の皮を使います。

――普段生活している中では、なかなか竹の皮に出合う機会はなさそうですがー。

 知り合いの農家の方が所有する山で採らせていただきました。青々とした若竹に、ちまきなどを包む見慣れた竹皮が貼り付いているのを見た時は、とても興奮しました。採取した竹皮はよく洗って、汚れを拭き、平らになるよう重しを載せて、乾燥させます。よく乾かす!がポイントです。
 その後、下処理した竹皮で何を作ろうかと考え、お弁当箱を編むことにしました。

①若竹からはがれようとしている竹皮
②採取した竹皮を洗ってサイズ別に束ねる

③洗った竹皮を、そのまま1日おく
④汚れや、うぶ毛を拭き取る(写真は麻ふきん)

⑤重しを載せて、伸ばす

――大きく育った若竹についている皮を見る体験は、そうなかなかできることではないですね。下処理も手間ひまかけて丁寧にされていて、自然からいただいた素材でクラフトができる感動はひとしおですね。


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 材料は、主に自然素材、そして再利用することも含め「身の回りにあるもの」を使うことを大切にしています。
 
 「なにかクラフトをしよう!」という発想ではなく、「身の回りにあるもの」をみて「閃き!」を感じた材料に対して、「これで何か表現できないかな?」と考えます。

 例えば庭を剪定した時にできた枝や、枯れた花や野菜の皮、歩きながら見つけた自然素材など、気になるものは「いつか使えるかも?」と思い、捨てないでひとまず保存のために干します( ´∀` )。

 保存食づくりを学んだ際、保存するためにはなんでも「水分を抜く(干す)」ことが大切だと実感しました。

枯れてしまったワイヤープランツ。しっかりしていたので捨てずに置いていました。
干し柿のヘタ。リースに使いました。
紅葉を飾ってみました
とうもろこしの皮。栞のヒモに使いました。

――すぐ身近にある自然素材や再利用品を、日頃から大切に保存されているのですね。

材料を探す際は、どんなツールで調べますか?

 材料そのものが自宅にない場合は、家の周辺で入手できないか探します。情報は図書館やインターネットで探したり、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループ(メンバー限定の非公開グループ)で他の方の投稿もみたりして、参考にしています。 

――常にさまざまな情報をキャッチするためにアンテナをむけていて、それがつしま屋さんの素敵な作品づくりに繋がっているのですね。


モノづくりスタイル

普段、どのような環境でクラフトをしていますか?

 「どんな形につくろうか」などのイメージを沸かせる段階を終えて実際につくる時は、何をつくるかで環境・場所を変えています。

① 集中力がいるときや、考えながら細かい作業をする時は、勉強などをする自分の机でつくります。昼の時間帯が多いですね。

② 草木染や、竹皮を編む等、やることが決まっていて、淡々と作業をするときは、夜の時間帯ですべて家事が終わった後、食卓でテレビを見ながらなど…リラックスしてつくります。

③ 例えばクリスマスリースなど、材料や道具で部屋が汚れるものをつくる時は、屋外(庭)で地べたに座って作業しています。これは家事をする前の夕方が多いです。

 また、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループに作品を紹介(投稿)するために写真を撮影しますが、写真が暗くなるので夜間は撮影しないようにしています。投稿もできる限り明るいうちにします。

――何をつくるかによって、時間帯や場所を変えているのですね。ご自分の生活スタイルにあわせてモノづくりをすることで、より素敵な作品が生まれそうですね。

染めたサラシの端切れで、ガーランドを作りました
竹皮を1本1本の細い紐状に
竹皮でザルを編んでいる作業中
台所。草木染
台所。にんじん葉っぱで、草木染
台所。土筆のアク抜きの煮汁で草木染


失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 竹皮を触るにつれて、竹のザルや花かごなど竹製品に興味が湧きました。しかしそういったものは、竹を加工した竹ひごで作られています。

 私は、竹ひごも加工する竹も持っていないので、「庭に生えている笹の木で、竹ひごの代用品をつくり、ザルやかごなどの製品をつくれないか?」とか、「乾燥した竹皮でつくれないか?」などと何度か試行錯誤しています。ですが未だにうまくできず完成していません。

 しかし「新しいことに挑戦したい」、「これをやったらどうなるだろう?」と思いついたことを実行に移すときが、一番わくわくしますね。

①竹皮をカット
②竹ヒゴの代用で、竹皮をカットして編むがうまくできない
③庭の笹の木を割いて竹ヒゴの代用
④竹ヒゴの代用で、笹の葉を割いて、むつめ編みしたが・・・
⑤途中で折れたり、編み方が分からなくなり、未完成・・・

――何事もやってみようという挑戦の気持ちや、実行するときのわくわく感が伝わってきます。できなくてもすぐに諦めず、つくり上げるまで常に工夫を重ねて挑戦しているのですね。

 SNIクラフト倶楽部の活動を何年かしてきて思うことは、クラフトと全く関係のない他の事をするときにも、「簡単にあきらめない心」とか「どうすればいいか考えて、工夫すること」や、「たとえ完璧じゃなくても満足すること」などが自然に身についてきたように思います。

 これは最近の気付きで、仕事や家事にも応用できているので、単純に手づくりをするクラブではなく、つくる過程やプロセスも大切にするSNIクラフト倶楽部の活動を続けてきたからこその功徳だと思っています。


作品のここに注目

今回、展示した作品について教えてください。

 竹皮のカゴをつくった経験は無いので、頭に完成のイメージはあるのになかなか形にならず、何度か諦めかけました。
 クラフト編みの本を読みながら、日を変えて気を取り直してチャレンジし、やっと形になりました。蓋(ふた)になる方が大きいサイズでつくったつもりが、そうならないなど難しかったです。

――竹皮の下処理や、編み込む様子をみるとその大変さが伝わってきます。何日間もかけて作られたのですね。

 竹皮を水で濡らして編んでいると、手に香ばしい香りがしてきます。そして、あのケモノのような、ちょっと怖い模様が、不思議とだんだん美しく見えてきます。編んでいても、しなやかで、どんなに強く引っ張っても、丈夫で破れません。さらに、抗菌作用もある優れ物なんです。

 私は竹皮を触っていると、いつも竹皮のおおらかさ、強さなど、まるで人格のようなものを感じます。編んでいるときは、いつも竹皮と結構リアルに対話しています(笑)。

 竹皮は単に皮でおにぎりを包むのもいいし、とにかく何を入れても美味しく見えますね。竹皮自身は蜜蝋ラップ(※)とよく似ていて、洗ったら再びシャキッと張りが戻り、繰り返し何度も使用できます。

※蜜蝋ラップ・・・蜜蝋(ミツロウ)を布に染み込ませて作るラップで、洗って繰り返し使うことができる

ランチョンマット
カゴ
ザル

――お店で売っている布や毛糸、加工された木材ではなく、森や山に入って自ら採取し、時間も労力もかかる下処理も丁寧に行い、素材そのものと向き合う姿勢に感銘を受けます。


さいごに

 連載3回目となる「こもれび アナザーストーリー」。

 作るモノを決めてから動き出すのではなく、身近な自然素材や身の回りにあるもので「これで何か表現できないかな?」「これをやったらどうなるだろう?」からの閃きを大切にしている、つしま屋さんならではのお話が聞けたと思います。

 また、何事にもチャレンジしてつくってみようという気持ちが、さまざまな作品を生み出す原動力になっていると感じました。

 読者のみなさまにとって、自分はどんなときにワクワクするだろう、どんな環境でクラフトをしているだろう、と振り返るきっかけになるとうれしいです。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?

 次回もどうぞおたのしみに!

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾純子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.2
作品名『小鳥の語らい』/ 作者:ミセス・ローズ


干しかごを手作りし、本当の豊かさを思う

 非常時用の保存食作りを始めた。野菜などを天日に干して保存食にする。その際に使う干しかごを手作りした。材料はソテツの葉と竹。いつか使えると思って取っておいた頂き物のソテツの葉の出番となり、竹は実家の裏山のものだ。

手作りの干しかごで保存食を作る。椎茸と人参は雑炊の具にしたり、他の野菜と煮たりして活用。生姜は粉末にして紅茶や味噌汁に入れて使う

 まずは、鉈をトントンと振り下ろし、竹を縦に割っていく。スコンと割れた時は、とても心地がよい。この竹を格子状に組み、端を麻紐で一つひとつ結んでいく。時間はかかったが、基礎の枠組みができあがった。

 外周に使った細い竹は手でしならせて、少しずつ丸みをつけた。ものづくりの良さは、手などの感覚を通じて、ものの性質を体感できることだ。丈夫でありながら、しなやかな竹。その感触にふれるときに感動し、竹というものを創り出した、いのちの世界の豊かさを思う。
 格子状に組んだ竹にソテツの葉を挟み込んで完成した。短い葉が残ったので、それらを生かせるように、間に竹を渡す工夫もした。いのちを生かすこと。わずかなものも無駄にしないこと。クラフト製作から本当の豊かさを学んだ。

竹を格子状に組み、ソテツの葉を挟み込んでいく
ソテツの葉は硬く、かごを作る材料に適していると感じて選んだ

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.115(2019年10月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.39」

心の中にあるものを形にする豊かな時間

 自転車の鍵置きを作りたいと思った。玄関に置くので、オブジェにもしたかった。「作りたい」と思った時から、ワクワク感が始まる。素材を探すのにアンテナを張る。ふっとアイデアが浮かんだりすると、とても嬉しい。
 今回は、庭にあるピラカンサスの剪定枝を使った。小枝を生かし、自然の素材をあしらっていった。自然にはそれぞれの美しさがある。小ぶりの可愛い松ぼっくり。いただきもののミモザは、光の束のようだ。深みのある赤が印象的な南天の実をアクセントにしたいと思い、綿花のガクの真ん中においたり、木の枝の実のように表現したりした。

鍵置きでありながらオブジェのようでもあり、調和した自然の姿が表現されている。全体の長さは25センチほど。鍵は右端に掛けるようにしてある

 心の中にあるものを自分の手で形にする豊かな時間。「これ、いいな」と思える瞬間は、パズルのピースがはまったようで嬉しい。完成するまでに出合う数々の発見や喜びは、既製のものを買うのでは得られない。手作りをする喜びを知って、身の回りにあるものを長く大切に使おうという気持ちも大きくなっていった。

鍵のストラップは、しじみの貝殻をお気に入りの柄の布で包んで手作りしたもの

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.114(2019年9月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.38」

手づくりの蜜蝋ラップから、脱プラスチックをはじめてみる

 みつろう……? 耳慣れない言葉だった。蜜蝋とは、ミツバチから分泌されるロウのこと。初めて聞いたのは、食品包装用のラップを蜜蝋と布を使って手作りできると知ったときだった。
 何気なく使ってきた石油由来のラップ。一度使っただけで捨ててきた。ピタッと密着するため、使われている添加剤なども気になっていた。
 今回、オーガニックコットンの生地に蜜蝋をしみ込ませる方法で作った。5分ほど乾かせば、天然成分のラップの出来上がり。

蜜蝋ラップを干す。ハンガーも竹や麻紐を使った手作り

 私は、おむすびを包んで出かけたり、お皿にかぶせて保存したりするときに使っている。使い終わったら水で洗う。初めて使ったとき、捨てずに繰り返し使うので、丁寧に洗っている自分に気づいた。優しい気持ちにもなる。このようにして、1年くらい繰り返し使うことができるのだ。最後は、土に還るのも嬉しい。
 脱プラスチックに向けて、一歩進むことができ、心から喜べる。こんな喜びをきっかけに、道端に落ちているプラゴミなどを拾うようになり、できることはたくさんあると思った。

容器にかぶせたり、おむすびを包んだりして使っている。蜜蝋には抗菌性があり食品の鮮度を保ち、食品の乾燥を防ぐ。ただし熱には弱く、電子レンジは不可

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.113(2019年8月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.37」