心の中にあるものを形にする豊かな時間

 自転車の鍵置きを作りたいと思った。玄関に置くので、オブジェにもしたかった。「作りたい」と思った時から、ワクワク感が始まる。素材を探すのにアンテナを張る。ふっとアイデアが浮かんだりすると、とても嬉しい。
 今回は、庭にあるピラカンサスの剪定枝を使った。小枝を生かし、自然の素材をあしらっていった。自然にはそれぞれの美しさがある。小ぶりの可愛い松ぼっくり。いただきもののミモザは、光の束のようだ。深みのある赤が印象的な南天の実をアクセントにしたいと思い、綿花のガクの真ん中においたり、木の枝の実のように表現したりした。

鍵置きでありながらオブジェのようでもあり、調和した自然の姿が表現されている。全体の長さは25センチほど。鍵は右端に掛けるようにしてある

 心の中にあるものを自分の手で形にする豊かな時間。「これ、いいな」と思える瞬間は、パズルのピースがはまったようで嬉しい。完成するまでに出合う数々の発見や喜びは、既製のものを買うのでは得られない。手作りをする喜びを知って、身の回りにあるものを長く大切に使おうという気持ちも大きくなっていった。

鍵のストラップは、しじみの貝殻をお気に入りの柄の布で包んで手作りしたもの

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.114(2019年9月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.38」