「こもれびアナザーストーリー」Vol.4

作品名『めぐる季節(刺しゅう)』
作者:andante

――今回、お話いただくのは、やさしい温もりが伝わる細やかな刺しゅうで、お住まいの八ヶ岳の四季(12カ月)を表現された andante(アンダンテ)さんです。日常の中にクラフトのヒントを見つけることができるような、andanteさんならではのお話を伺うことができました。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

 刺しゅうを始めて一年ほどたった頃、本の図案ではなく、オリジナルの作品を作ってみたいと思うようになりました。
 絵を描くことに対して苦手意識があったのですが、小さなモチーフなら描けるのではと、自分の身近な自然を題材に選びました。
 普段の生活のなかで、季節ごとに印象に残っているものをあげていくと次々浮かんできて、その12カ月のモチーフを時計に見立ててデザインしたら面白そうと思いつき、この作品が生まれました。
 12個のモチーフは、庭や散歩道で出会う植物や生きもの、地元の産物など、どれも自分の日常生活と結びついています。

――普段の生活のなかで自然に触れられているからこそのアイデアですね。12カ月の季節と時計の時間が重なるデザイン、本当に素敵です。
 身近にある自然が美しくかわいいものなんだなと改めて感じる作品で、見ているだけでわくわくします。


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 まず、家にあるもので作ることができないか材料を探します。古着を再利用することもあります。
 ちょうどよいものがなくて布や糸などを購入する場合は、綿や麻など天然素材のものを選ぶようにしています。同じような材料で国産のものがあればそちらを選ぶことが多いです。

――家にあるもの、天然素材、国産のもの、と環境に負荷のかからないことを大切にされているのですね。

 刺しゅうの場合は絵の具のように色をまぜることができないので、糸の色数がたくさんあって見ているだけでも楽しいです。
 クラフト倶楽部に入って、ものを無駄にせず大切に使うことをより意識するようになりました。残った糸も、ごく短いもの以外は保管して使っています。お菓子の空き箱に保管していて、秘かに「宝箱」と呼んでいます。

――「宝箱」!呼び方からも大切に使われていることが伝わってきます。そんなふうに大事にされている材料でつくったら、そのモノ自体にも幸運が宿りそうです。まさに「残り物には福がある」ような♪

1)「どこにでもある菓子箱なんですよ」と話されていましたが、色別にきれいにまとめて保管されていて、大切にされていることがよく伝わります。
2)お茶のひとときに使うポットカバーに刺しゅうを施した作品。キルト芯の代わりに古い綿毛布を切って挟まれたとのこと。

3)コースターと鍋つかみは、娘さんが学校で使った巾着を再利用。

モノづくりスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 木の食卓テーブルで、好きな音楽をかけながら作業することが多いです。
 刺しゅうをするときは、つい座りっぱなしになりがちなので、作業の途中で庭に出て家庭菜園の草取りをしたり、同時進行でお豆を煮たりして、ほどよく体を動かすようにしています。
 ときには夜、家事を終えて、時間を気にせず作品に向かうのもホッとする時間です。

――クラフトが生活の中で、リラックスすることにつながっているのですね。また、andanteさんのように、どれかひとつと作業を絞るのではなく、複数のことを合わせることで、身体にも心にもいい影響がありそうです。

1)クラフトがリラックスすることにつながる~手づくりのあたたかみと、心穏やかな時間が写真を通して、伝わってきます。
2)普段使用されている道具。刺しゅうの小物入れはご主人のお母さまからのクリスマスプレゼント。
3)お礼に、そのデザインを取り入れた刺しゅうをして、翌年のクリスマスに贈られたそうです。とても素敵な交流を感じます。

失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 刺しゅうをしている最中に一度、作品にお茶をこぼしたことがありました。半分以上できていたのでとてもショックで、どうしようかと悩みました。
 ふと、友人がブラウスのシミを刺しゅうでカバーしていたのを思い出し、私も図案を少し変え、目立たない色の糸を選んだらシミもわからなくなりました。元のデザインよりかえってよい雰囲気になり、思い出に残っています。

――半分以上、仕上げてきた時間や労力を思うと、本当にショックですね。それでも、どうにかしたいと考えたことやご友人からの知恵に、ご自身のアイデアも加わって、プラスの出来事になっていることが素晴らしいです。

左側の巣の部分にシミがあったとのこと。

刺しゅう糸の代わりに細い麻ひもを巻いてボリュームを出し、大きさを広げる工夫がなされている。刺しゅうされている植物はリネンの原料となる亜麻(フラックス)。作品はSNIクラフト倶楽部のFacebookグループ(メンバー限定の非公開グループ)でも紹介されている。

~こぼれ話~

お話ししている中で、感謝や気持ちを伝えるときにもクラフトが身近にある方なのだと感じました。心のこもった作品の数々。見ているだけで癒やされます。

1)日本ミツバチを飼っている友人に贈った麻のマット
2)家庭菜園のお野菜をくださった方へのお礼状(紙刺しゅう)


作品のここに注目

今回、展示された作品について教えてください。

 刺しゅうをしていて一番難しいのは、昆虫や動物などの生きものです。目の付け方や触覚の角度でも表情がかわるので、リスやミツバチ、チョウなどは何度もやり直しました。それだけに愛着があります。
 8時の位置にいるチョウはアサギマダラというチョウです。1000キロ以上も海を越えて渡りをする「旅するチョウ」で、初めて八ヶ岳でこのチョウを見た時、大きな羽をひろげてふんわり優雅に飛ぶ姿に目を奪われました。その時の感動を刺しゅうにしました。
 リスは冬支度のころやってきて、わが家の庭の木の根元にも木の実を埋めていきます。かわいらしさが表現できていればうれしいです。

――本当にどのモチーフもかわいらしく、愛らしく、見ていて心が和みます。実体験として目にして、感じたことが刺しゅうにも表れているように思います。また、刺しゅうの刺し方でいきものの表情が変わるという話は驚きでした。何度もやり直しをしたと話されるように、作品を見ていると、そのひとつひとつに心を込めて刺しゅうされたことが伝わってきます。


さいごに

 作品のアイデアや失敗したときのエピソードなど、日常からヒントを得ていることを感じました。

 「宝箱」と呼ぶ箱に、残った糸を大切に保管されているように、一つひとつのモノや出来事を大切にされていることが、素敵な作品へとつながっているのだと思います。
 感じたことをクラフトに活かしてみる、まずは家にあるものでつくってみる、など取り入れやすそうなことから、一つひとつ行動に移されていますね。日常の中にヒントがあると思うと、より楽しいクラフトの時間を過ごすことができそうです。

 素敵な作品の背景には、必ず興味深いお話があり、毎回よろこびや発見があって、楽しい時間を過ごさせていただいています。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?
 次回もどうぞおたのしみに~♪♪

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾富美子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.3
作品名『竹皮の弁当箱』/ 作者:つしま屋


「こもれびアナザーストーリー」Vol.3

作品名『竹皮の弁当箱』 作者つしま屋

――今回お話しいただくのは、竹皮の弁当箱をつくられた、つしま屋さんです。
森や山に行って素材を自ら採り、その自然素材と対話する気持ちでクラフトをしているそうです。つくりたいと思ったきっかけや、材料探しをはじめあらゆるプロセスを大切にしているつしま屋さんならではのインタビューとなりました。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

 脱プラ(脱プラスチック)を意識しだしてから、竹の皮が急に気になりだしたのがきっかけでした。春先のたけのこの時期の皮ではなく、5月末頃の若竹のぐんと伸びる時期に、大きくなっていく竹に張りついていられなくなり、はらりと脱ぎ捨てられる竹の皮を使います。

――普段生活している中では、なかなか竹の皮に出合う機会はなさそうですがー。

 知り合いの農家の方が所有する山で採らせていただきました。青々とした若竹に、ちまきなどを包む見慣れた竹皮が貼り付いているのを見た時は、とても興奮しました。採取した竹皮はよく洗って、汚れを拭き、平らになるよう重しを載せて、乾燥させます。よく乾かす!がポイントです。
 その後、下処理した竹皮で何を作ろうかと考え、お弁当箱を編むことにしました。

①若竹からはがれようとしている竹皮
②採取した竹皮を洗ってサイズ別に束ねる

③洗った竹皮を、そのまま1日おく
④汚れや、うぶ毛を拭き取る(写真は麻ふきん)

⑤重しを載せて、伸ばす

――大きく育った若竹についている皮を見る体験は、そうなかなかできることではないですね。下処理も手間ひまかけて丁寧にされていて、自然からいただいた素材でクラフトができる感動はひとしおですね。


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 材料は、主に自然素材、そして再利用することも含め「身の回りにあるもの」を使うことを大切にしています。
 
 「なにかクラフトをしよう!」という発想ではなく、「身の回りにあるもの」をみて「閃き!」を感じた材料に対して、「これで何か表現できないかな?」と考えます。

 例えば庭を剪定した時にできた枝や、枯れた花や野菜の皮、歩きながら見つけた自然素材など、気になるものは「いつか使えるかも?」と思い、捨てないでひとまず保存のために干します( ´∀` )。

 保存食づくりを学んだ際、保存するためにはなんでも「水分を抜く(干す)」ことが大切だと実感しました。

枯れてしまったワイヤープランツ。しっかりしていたので捨てずに置いていました。
干し柿のヘタ。リースに使いました。
紅葉を飾ってみました
とうもろこしの皮。栞のヒモに使いました。

――すぐ身近にある自然素材や再利用品を、日頃から大切に保存されているのですね。

材料を探す際は、どんなツールで調べますか?

 材料そのものが自宅にない場合は、家の周辺で入手できないか探します。情報は図書館やインターネットで探したり、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループ(メンバー限定の非公開グループ)で他の方の投稿もみたりして、参考にしています。 

――常にさまざまな情報をキャッチするためにアンテナをむけていて、それがつしま屋さんの素敵な作品づくりに繋がっているのですね。


モノづくりスタイル

普段、どのような環境でクラフトをしていますか?

 「どんな形につくろうか」などのイメージを沸かせる段階を終えて実際につくる時は、何をつくるかで環境・場所を変えています。

① 集中力がいるときや、考えながら細かい作業をする時は、勉強などをする自分の机でつくります。昼の時間帯が多いですね。

② 草木染や、竹皮を編む等、やることが決まっていて、淡々と作業をするときは、夜の時間帯ですべて家事が終わった後、食卓でテレビを見ながらなど…リラックスしてつくります。

③ 例えばクリスマスリースなど、材料や道具で部屋が汚れるものをつくる時は、屋外(庭)で地べたに座って作業しています。これは家事をする前の夕方が多いです。

 また、SNIクラフト倶楽部のFacebookグループに作品を紹介(投稿)するために写真を撮影しますが、写真が暗くなるので夜間は撮影しないようにしています。投稿もできる限り明るいうちにします。

――何をつくるかによって、時間帯や場所を変えているのですね。ご自分の生活スタイルにあわせてモノづくりをすることで、より素敵な作品が生まれそうですね。

染めたサラシの端切れで、ガーランドを作りました
竹皮を1本1本の細い紐状に
竹皮でザルを編んでいる作業中
台所。草木染
台所。にんじん葉っぱで、草木染
台所。土筆のアク抜きの煮汁で草木染


失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 竹皮を触るにつれて、竹のザルや花かごなど竹製品に興味が湧きました。しかしそういったものは、竹を加工した竹ひごで作られています。

 私は、竹ひごも加工する竹も持っていないので、「庭に生えている笹の木で、竹ひごの代用品をつくり、ザルやかごなどの製品をつくれないか?」とか、「乾燥した竹皮でつくれないか?」などと何度か試行錯誤しています。ですが未だにうまくできず完成していません。

 しかし「新しいことに挑戦したい」、「これをやったらどうなるだろう?」と思いついたことを実行に移すときが、一番わくわくしますね。

①竹皮をカット
②竹ヒゴの代用で、竹皮をカットして編むがうまくできない
③庭の笹の木を割いて竹ヒゴの代用
④竹ヒゴの代用で、笹の葉を割いて、むつめ編みしたが・・・
⑤途中で折れたり、編み方が分からなくなり、未完成・・・

――何事もやってみようという挑戦の気持ちや、実行するときのわくわく感が伝わってきます。できなくてもすぐに諦めず、つくり上げるまで常に工夫を重ねて挑戦しているのですね。

 SNIクラフト倶楽部の活動を何年かしてきて思うことは、クラフトと全く関係のない他の事をするときにも、「簡単にあきらめない心」とか「どうすればいいか考えて、工夫すること」や、「たとえ完璧じゃなくても満足すること」などが自然に身についてきたように思います。

 これは最近の気付きで、仕事や家事にも応用できているので、単純に手づくりをするクラブではなく、つくる過程やプロセスも大切にするSNIクラフト倶楽部の活動を続けてきたからこその功徳だと思っています。


作品のここに注目

今回、展示した作品について教えてください。

 竹皮のカゴをつくった経験は無いので、頭に完成のイメージはあるのになかなか形にならず、何度か諦めかけました。
 クラフト編みの本を読みながら、日を変えて気を取り直してチャレンジし、やっと形になりました。蓋(ふた)になる方が大きいサイズでつくったつもりが、そうならないなど難しかったです。

――竹皮の下処理や、編み込む様子をみるとその大変さが伝わってきます。何日間もかけて作られたのですね。

 竹皮を水で濡らして編んでいると、手に香ばしい香りがしてきます。そして、あのケモノのような、ちょっと怖い模様が、不思議とだんだん美しく見えてきます。編んでいても、しなやかで、どんなに強く引っ張っても、丈夫で破れません。さらに、抗菌作用もある優れ物なんです。

 私は竹皮を触っていると、いつも竹皮のおおらかさ、強さなど、まるで人格のようなものを感じます。編んでいるときは、いつも竹皮と結構リアルに対話しています(笑)。

 竹皮は単に皮でおにぎりを包むのもいいし、とにかく何を入れても美味しく見えますね。竹皮自身は蜜蝋ラップ(※)とよく似ていて、洗ったら再びシャキッと張りが戻り、繰り返し何度も使用できます。

※蜜蝋ラップ・・・蜜蝋(ミツロウ)を布に染み込ませて作るラップで、洗って繰り返し使うことができる

ランチョンマット
カゴ
ザル

――お店で売っている布や毛糸、加工された木材ではなく、森や山に入って自ら採取し、時間も労力もかかる下処理も丁寧に行い、素材そのものと向き合う姿勢に感銘を受けます。


さいごに

 連載3回目となる「こもれび アナザーストーリー」。

 作るモノを決めてから動き出すのではなく、身近な自然素材や身の回りにあるもので「これで何か表現できないかな?」「これをやったらどうなるだろう?」からの閃きを大切にしている、つしま屋さんならではのお話が聞けたと思います。

 また、何事にもチャレンジしてつくってみようという気持ちが、さまざまな作品を生み出す原動力になっていると感じました。

 読者のみなさまにとって、自分はどんなときにワクワクするだろう、どんな環境でクラフトをしているだろう、と振り返るきっかけになるとうれしいです。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?

 次回もどうぞおたのしみに!

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾純子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」Vol.2
作品名『小鳥の語らい』/ 作者:ミセス・ローズ


「こもれび アナザーストーリー」Vol.2

作品名『小鳥の語らい』 作者:ミセス・ローズ

――今回、お話いただくのは、押し花で2羽の小鳥が語り合う仲睦まじい様子を制作されたミセス・ローズさんです。
 ミセス・ローズさんは押し花だけでなく、普段から布小物づくりを楽しまれています。その楽しまれている姿が目に浮かぶようなインタビューとなりました。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

 押し花をはじめたのは、押し花教室に通う母の付き添いがきっかけです。大きな教室ではなく、教えてくださる先生の個人宅(一軒家)で、数人の生徒が集まって習っていました。みなさんのとても楽しそうな姿を見るうちに興味がわき、私も習うことにしました。

――付き添いだったところから、楽しそうな姿に惹かれて…よろこびの連鎖を感じますね。

 この作品をつくったのは、何年か前です。教室には、先生がつくられた作品が沢山あり、その中に、小鳥がモチーフのものを見つけました。「可愛い、本物みたい」って一目惚れしました。同じ材料がありましたので、鳥は参考にさせてもらって、後は自分で止まり木などつくりました。

 押し花は、絵を描くように、つくりたいものをイメージしながら、花や葉っぱを組み合わせていきます。同じ材料を使っていても、つくる人によって出来上がりの雰囲気が違います。

 どんな色を使おうかと、花の色を選ぶことも、とても楽しい作業です。時間を忘れて夢中になってしまいます。だんだんと作品に命が吹き込まれていくことを感じます。

――小鳥に一目惚れされたときめきが作品にも宿っているようです。また、押し花の魅力が存分に伝わってきました。花で絵を描く、花の色を選ぶ、想像しているだけで、わくわくします。

押し花教室に通いながらつくった作品の数々


材料のポイント

押し花や布小物など、材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

 押し花の材料は全て、自然のものを使っています。実家の庭で父が育てた花などを、母が押してつくっています。葉っぱ、草花、枝など、無駄なものはひとつもありません。
 同じ花びらでも、微妙に色合いや形が違います。

――まさに自然そのままの材料を使用されているのですね。また、実際に手に触れて、自分の目で見て制作されているからこその言葉だと感じます。

 布小物(ポーチやバック)を作るときは、生地屋さんで購入します。さまざまな布が売られていますが、国産の綿100%の布を選ぶようにしています。

――常に環境に配慮されているのですね。その意識は、かわいらしくて、あたたかみを感じるミセス・ローズさんの作品からも伝わってくるように思います。

国産・綿100%の布でつくった巾着
<こぼれ話>
小学生の頃、家庭科の授業で巾着を縫ったことが、裁縫での最初の感動だったそうです。たった一枚の薄い布が、端と端を縫うことで、物を入れることのできる袋になった!と。バッグもポーチも「一枚の布からできる」。その言葉から、裁縫へのわくわくが伝わってきました。

ひとつとして同じものはない

モノづくりのスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

 布小物を自宅でつくっています。とくに決まった時間はなく、休日の昼間や、就寝準備が出来た後など、アイディアが浮かんだら、ミシンを出して縫いはじめます。つくりたいと思ったときに、自由に、気軽に、つくっています。
 また、少し、体調不良のときや気分が落ち込みそうになったときほど、布を眺めるようにしています。どんなものをつくろうか、色や柄の組み合わせを考えていると、いつの間にか楽しい気分になり、元気になっています。
 ものづくりは、精神的にも、肉体的にも、とても良い作用があると思います。

――生活の中にクラフトがあるのですね。落ち込みそうになったときほど、というのは意外だなと思いましたが、確かに手作業の中でしか得られない心の充実感がありますね。単純ですが、私もミセス・ローズさんのように、生活の中にクラフトを取り入れてみたい!という気持ちになりました。

この色にこの色、と組み合わせを考えることが気分転換に♪
<こぼれ話>
おばあさまが着物を縫製する仕事をされていて、裁縫を身近に感じる環境で育ったそうです。ちなみにおばあさまは95歳までその仕事を続けていらっしゃったとのこと!そのクラフトを楽しむ想いが受け継がれてきたことを感じるインタビューでした。

失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

 押し花は、全体のバランスをとることが難しいです。一つの作品に、材料(花など)をたくさん入れすぎてしまう傾向があり、色々と勉強になります。
 布小物づくりにも失敗は多々あります。はじめの頃は、ファスナーの位置を逆に取り付けてしまったり、中表に(表面が内側になるようにして)縫うところで表面を外側にしたまま縫うなどの失敗もありました。

――そんな失敗も経験されているとは、完成した作品からは想像もつかないです。

 ただ、一度失敗したら、次からは気をつけるようになります。技術も向上していくと思いますので、たくさん縫うことも練習になります。
 何より、布の組み合わせは無限にあります。大量生産とは違い、自分でつくりあげた世界にたった一つだけの作品は、たとえゆがんでいても、とても愛着がわいて、大切にしようと思えます。
 出来上がったときの感動は、自分でつくってみないと味わえないと思います。そしてまた、次も手づくりしたいとアイディアが湧いてきます。

――失敗と一言では括ることのできないプラスの面がたくさんありますね。技術が向上していくというだけでなく、感動という体験もまた、失敗があってこそなのだと思いました。お話を伺う内に、私も何かつくりたくなってきました。

布バッグの数々。他人のためにつくることも多く、どの柄がよろこばれるかな、と相手を想像しながら布を選ぶそう。

縦40cm×横47cmを3日間かけてつくった大作

作品のここに注目

今回、展示された作品について教えてください。

 小鳥が語り合っている様子をつくりました。本当に生きているような小鳥に見えるよう、命を吹き込むイメージで、可愛らしくつくりました。止まり木に見立てたツルの中心にもハートを描いています。

――ハートは手を加えて形をつくったのではなく、自然そのままの葉を使用されているのですね。花や葉などが持つ本来の形が活かされるように、丁寧に組み合わされていて、小鳥のやわらかさや、愛らしさが表現されていると感じます。今にも小鳥のさえずりが聞こえてきそうな楽しげな作品ですね。


さいごに

 連載2回目となる「こもれび アナザーストーリー」。

 前回の暁工房さんとは得意とされているクラフトの種類が異なり、また違う視点でのお話を伺うことができました。

 しかし、クラフトの種類は異なっても、クラフトの楽しみ方や考え方の根本にある意識は共通しているところもあったように思います。

 読者のみなさまにとっても、普段自分では言葉にしてこなかった思いが綴られていたり、自分の中にも同じような気持ちがあることを発見できたりと、共感できるエピソードがあったのではないでしょうか。

 自分はどんなふうにクラフトを楽しんでいたかな?と振り返り、クラフト時間がより有意義なものになるきっかけとなりましたら嬉しいです。

 次はどんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?

 次回もどうぞおたのしみに~♪♪

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾富美子)


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作者インタビュー「こもれびアナザーストーリー」 
作品名『八ヶ岳ブックスタンド』 作者/暁工房

「こもれび アナザーストーリー」Vol.1

作品名『八ヶ岳ブックスタンド』 作者:暁工房

――今回、お話いただいたのは、ブックスタンドを八ヶ岳に見立てて製作された暁工房さん。
八ヶ岳、といえば山梨・長野両県へまたがる日本百名山の一つです。
そんな八ヶ岳をブックスタンドのモチーフにした経緯や、木工作品を得意とする暁工房さんならではのお話をどうぞお楽しみください。


作品ストーリー

どのようなきっかけで、この作品をつくろうと思いましたか?

5~6年前に「木」という素材で “自分で簡単につくれる・人のお役に立つものを” という発想から「ブックエンド」をつくるようになりました。

はじめは「コの字型」のシンプルなデザインでした。2個のブックエンドの間に大小さまざまな書籍を挟んで並べてみると、そのありさまが八ヶ岳の山々のように見え…それが『八ヶ岳ブックスタンド』のアイデアにつながりました。

――何気ない日常に、アイデアがあったとは、すてきな話です^^


材料のポイント

材料を探すときの基準や大切にしていることはありますか?

廃材や端材でつくるようにしています。
その方がとても表情のあるクラフト作品に仕上がり、私はとても気に入っています。

――材料はどのように仕入れていますか?

製材所が多いです。製材所だと、端材を無料でくださる場合があります。
インターネット等で地元の製材所を検索して、電話で「端材をもらえるかどうか」尋ねてみると良いです。
木造の家を解体したりしている所があれば声を掛けるのも良いですね。
ホームセンターでも端材が販売されていますが、どうしても入手できない場合は、国産材を必ず選んで購入します。
また、ときどきですが、原木や廃材を譲っていただくこともあります。

――材料ひとつとっても、さまざまな仕入れ方法があるのですね。大変参考になります。
そして、環境に配慮されているからこそ、仕入れ方法の豊富さ、考え方の柔軟さへつながっているのだろうなと思いました。

木工店で無料でもらえる端材コーナー
北杜市の製材所で無料でもらえる端材

ものづくりのスタイル

普段、どのようにクラフトを楽しんでいますか?

製作場所は、自宅の車庫が多いです。
自分でつくった木製作業台で、木工品をつくるのが最高です。
大好きなクラシック音楽を聴きながらだと、作業がもっとはかどります。

――好きな場所で、好きな音楽に囲まれてクラフトする時間。いいですね。「最高」の言葉から、楽しさが伺えます。

作品をつくるときは、「自分のためよりも、誰かのためにお役に立てないか?」を常に考えています。その方が、つくりがいもあり、喜びも大きく、時間を有効に使える実感があります。

つくる時間より、「どんな作品をつくろうか?」と考えている時間の方が長いかもしれません。(笑い)

また、自分でも簡単につくれるものはないかと、常に情報収集しています。木工サイトやSNS、雑貨店やクラフト市めぐりだけでなく、ファッション関係、スーパー、ホームセンター、レストランなど、ありとあらゆるお店にある陳列棚、小物、お店の看板などを眺めては、「木で製作できないか?」と自分に問いかけて、日々ワクワクしています。

――クラフトに対する日々の姿勢からも、クラフトへのよろこびが伝わってきます。

思うように工程が進まないこともあります。

木工製作ばかりしていると飽きてくるというか(笑い)、
そんな時は、畑仕事や部屋の片づけ、整理・整とん、薪割りと、ほかの作業も同時並行で行うことで、また新たなアイデアが浮かび、満足のいく作品に仕上がっていきます。

――日常の中にクラフトが溶け込んでいることが垣間見え、肩の力を抜いて楽しんでいいのだな~と思えるお話ですね。

自宅車庫の作業場
自分で作った作業台

失敗は成功のもと!

ずばり「失敗は成功のもと!」と思う話がありましたら教えてください。

おおよそ、つくりたい作品の絵を描いてから製図を簡単に書きますが、製図どおりに完成したことはありません。(笑い)

必ず途中で寸法が狂ったり、歪んできたりしますが、それをどうにか解決していく過程が楽しく、完成したときの喜びは一入(ひとしお)です。

私は、多少隙間が空いたり曲がったりしていても、味わい深い作品になると信じています。だから、初めから傷が入っていたり、汚れていたり、塗装が施してあるような廃材・端材を使うことが大好きになりました。
サイズがバラバラで使いづらいかもしれませんが、捨てられる予定だったものから、また新たなモノをつくり出すことが楽しく、愛着がわき、私たちの身の回りにあるどんなモノでも大切に使っていきたい気持ちが湧いてきます。

――失敗と捉えてしまいそうなことも、暁工房さんにとっては、面白さのひとつであり、味わいとして感じていらっしゃるのですね。そして、モノを大切にすることにつながっていく心の持ち方も、クラフトの醍醐味なのだと感じます。

端材で作ったアクセサリー掛け
県産の唐松材で作った階段
ナラのブックスタンド(生光展※で奨励賞を受賞)
端材で作った木箱

(※生長の家の美術公募展)


作品のここに注目

おすすめの使い方を教えてください。

一般的なブックエンドは1個で使うことが多いですが、「八ヶ岳ブックスタンド」は2個1組で使います。そして、大小さまざまな書籍をたくさん並べることによって、作品が生きてきます。

~~と、いうことで実際にやってみました^^~~

 本の大きさによるジグザグがひとつのアートになるブックスタンドとは、画期的で素晴らしいアイデアですね!色んな高さの本を並べてみたくなります。

さいごに

今回の「こもれび アナザーストーリー」はいかがでしたでしょうか?
参考になる話も多く、クラフトへの意欲がぐんぐんと湧き出てきた方もいるのではないかと思います。
私自身、作者の方へお話を伺うことで、共感したり、知らないことを知るよろこびであったり、楽しい時間となりました。
今後も展示作品を出品いただいた作者の方へお話を伺っていく予定です。
次回は、どんなアナザーストーリーを聞くことができるのでしょうか?
次回もどうぞおたのしみに~♪♪

(聞き手:SNIクラフト倶楽部・松尾富美子)


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