自分で直すことで、より大切に思えるモノに

 10年ほど前、メガネを買った時にサービスでついてきたメガネケース。最近、触るたびに表面がボロボロとはがれてくるようになった。新調するのは簡単で、お店には様々な形や色のものがあったけれど、今使っているものより素敵と思えるものは無かった。サービスでついてきたこのメガネケースは、10年使っている間に私の大切なものになっていたのだと気づいた。


 家にある端布を木工用ボンドで貼り付けて直すことを思いついた。もし失敗したら諦めて買い替えればいいのだ、と軽い気持ちで、でも慎重に、シワが寄らないように、角がかさばらないように、ふたがうまく開閉できるように、じっくり時間をかけて作業した。


 出来上がりは、布に少しボンドが染み出たり、ふたの裏の布を切り過ぎて角に元の色が見えたりしているけれど、真剣に向き合って直したメガネケースは、より愛おしくなった。以前は鞄にポイッと投げ入れていたけど、今はそうっと。


(H.M・SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.82(2017年1月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.7」