干しかごを手作りし、本当の豊かさを思う

 非常時用の保存食作りを始めた。野菜などを天日に干して保存食にする。その際に使う干しかごを手作りした。材料はソテツの葉と竹。いつか使えると思って取っておいた頂き物のソテツの葉の出番となり、竹は実家の裏山のものだ。

手作りの干しかごで保存食を作る。椎茸と人参は雑炊の具にしたり、他の野菜と煮たりして活用。生姜は粉末にして紅茶や味噌汁に入れて使う

 まずは、鉈をトントンと振り下ろし、竹を縦に割っていく。スコンと割れた時は、とても心地がよい。この竹を格子状に組み、端を麻紐で一つひとつ結んでいく。時間はかかったが、基礎の枠組みができあがった。

 外周に使った細い竹は手でしならせて、少しずつ丸みをつけた。ものづくりの良さは、手などの感覚を通じて、ものの性質を体感できることだ。丈夫でありながら、しなやかな竹。その感触にふれるときに感動し、竹というものを創り出した、いのちの世界の豊かさを思う。
 格子状に組んだ竹にソテツの葉を挟み込んで完成した。短い葉が残ったので、それらを生かせるように、間に竹を渡す工夫もした。いのちを生かすこと。わずかなものも無駄にしないこと。クラフト製作から本当の豊かさを学んだ。

竹を格子状に組み、ソテツの葉を挟み込んでいく
ソテツの葉は硬く、かごを作る材料に適していると感じて選んだ

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.115(2019年10月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.39」

心の中にあるものを形にする豊かな時間

 自転車の鍵置きを作りたいと思った。玄関に置くので、オブジェにもしたかった。「作りたい」と思った時から、ワクワク感が始まる。素材を探すのにアンテナを張る。ふっとアイデアが浮かんだりすると、とても嬉しい。
 今回は、庭にあるピラカンサスの剪定枝を使った。小枝を生かし、自然の素材をあしらっていった。自然にはそれぞれの美しさがある。小ぶりの可愛い松ぼっくり。いただきもののミモザは、光の束のようだ。深みのある赤が印象的な南天の実をアクセントにしたいと思い、綿花のガクの真ん中においたり、木の枝の実のように表現したりした。

鍵置きでありながらオブジェのようでもあり、調和した自然の姿が表現されている。全体の長さは25センチほど。鍵は右端に掛けるようにしてある

 心の中にあるものを自分の手で形にする豊かな時間。「これ、いいな」と思える瞬間は、パズルのピースがはまったようで嬉しい。完成するまでに出合う数々の発見や喜びは、既製のものを買うのでは得られない。手作りをする喜びを知って、身の回りにあるものを長く大切に使おうという気持ちも大きくなっていった。

鍵のストラップは、しじみの貝殻をお気に入りの柄の布で包んで手作りしたもの

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.114(2019年9月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.38」

手づくりの蜜蝋ラップから、脱プラスチックをはじめてみる

 みつろう……? 耳慣れない言葉だった。蜜蝋とは、ミツバチから分泌されるロウのこと。初めて聞いたのは、食品包装用のラップを蜜蝋と布を使って手作りできると知ったときだった。
 何気なく使ってきた石油由来のラップ。一度使っただけで捨ててきた。ピタッと密着するため、使われている添加剤なども気になっていた。
 今回、オーガニックコットンの生地に蜜蝋をしみ込ませる方法で作った。5分ほど乾かせば、天然成分のラップの出来上がり。

蜜蝋ラップを干す。ハンガーも竹や麻紐を使った手作り

 私は、おむすびを包んで出かけたり、お皿にかぶせて保存したりするときに使っている。使い終わったら水で洗う。初めて使ったとき、捨てずに繰り返し使うので、丁寧に洗っている自分に気づいた。優しい気持ちにもなる。このようにして、1年くらい繰り返し使うことができるのだ。最後は、土に還るのも嬉しい。
 脱プラスチックに向けて、一歩進むことができ、心から喜べる。こんな喜びをきっかけに、道端に落ちているプラゴミなどを拾うようになり、できることはたくさんあると思った。

容器にかぶせたり、おむすびを包んだりして使っている。蜜蝋には抗菌性があり食品の鮮度を保ち、食品の乾燥を防ぐ。ただし熱には弱く、電子レンジは不可

(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.113(2019年8月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.37」

食器洗いクロスを麻布で手作りし、プラスチックフリーに

 台所で洗いものが終わると、手作りの食器洗いクロスを丁寧に洗って干す。心地よい瞬間だ。

空き瓶に挿した竹に、食器洗いクロスを干す

 アクリルたわしや合成スポンジなど、石油由来の素材で作られたものは、台所からマイクロプラスチックが流れ出て、海洋生物に深刻な被害を与える一因になっていると知り、麻の生地で作ってみようと思いついた。出合った麻は手ざわりがよく、メッシュ地で通気性も良い感じ。江戸時代から作られている奈良晒という伝統的な麻織物だ。
 持ち帰って、早速、縁をかがり、筒状に縫った。ひと針ひと針、時間を縫い込むようにして、ようやく出来上がった。使い心地はどうだろう。ワクワクしながら、お皿を洗ってみる。……もう少し厚みがあってもいいかな。余った生地でもう一つ作り、二重にしてもう一度試してみる。いい感じだ。

筒状に縫われている
手作りの食器洗いクロス。右が麻素材、左は綿素材


 麻布は、使うほどに柔らかくなり、食器へのなじみもよい。そしてなにより、自然に優しいものを使うことに深い喜びを感じる。
 創造することは喜びにあふれている。


(Y・F / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.112(2019年7月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.36」

ひと手間加える楽しさと喜び

 私がクラフトの中で一番好きなのは、空いた容器などに手を加えて、見て楽しく、使って嬉しいものに変身させることです。
 佃煮の木箱は、ペーパーナプキンを貼り、蝶番を取り付けてフタを開閉できるようにし、アクセサリー入れにしました。元は黒色だった海苔の空き缶も、端布やレースを使って明るくイメージチェンジ! ジャムの空きビンには、切り抜いたラベルを貼り、フタは布で覆って綿を入れ込み、ピンクッションとしても使えるようにしました。美容クリームの容器は、紙やすりで表面の印刷を消してからペーパーナプキンを貼り、ビーズなどの小物入れに。

使い終わった佃煮の木箱、ジャムの空きビン、美容クリームの容器が、おしゃれな雰囲気に生まれ変わった
佃煮の箱には蝶番を付けて、開閉式に

 空き箱はきれいな絵や写真のカレンダーを貼って、手作りのお菓子を差し上げる時に使っています。すると相手の方が、「箱がもったいない」と返して下さるので、また別の方へと何度も行ったり来たりして、有効活用してもらえる喜びを感じています。今では“空く前”から、「これはどんな風に変身させようかな」と考えるのが、楽しみになりました。

空き箱もカラフルに変身し、手作りお菓子の箱に

(H・N SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.111(2019年6月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.35」

※この記事は2019年に執筆したものです

娘の披露宴を手づくりで演出

 結婚が決まった三女から、披露宴会場のウェルカムコーナー作りを頼まれました。娘からは和風と洋風、2つのコーナーを作りたいという希望があり、洋風の方はオーガンジーなどで白とピンクのバラの花を作り、それをハート型の段ボールに隙間なく貼って、飾りました。

布のバラをハート型のダンボールに貼って飾った

 和風コーナーは、和紙や折り紙を使って、花くす玉やブーケ、祝い鶴などを作りました。その他には、ウェルカムボードのキットを完成させたり、小物を準備したりしました。その際、1回しか使えずリユース出来ないものや、プラゴミになるバルーンなどは避けました。
 今回の飾り付けで使ったものの中には、ウェディング関係のリユース品を扱うサイトで、三女が購入したものもあります。そのサイトでは“お古”ではなく“幸せのリレー”という言葉で商品が紹介されていて、素敵だなと思いました。

三女の披露宴会場の和風ウェルカムコーナー。中央の額、和紙の花くす玉、花束、祝い鶴などを手づくりした。
手づくりした花くす玉、花束、祝い鶴

 一連の準備期間中、試行錯誤を繰り返す毎日ではありましたが、それよりも手伝わせてもらえる喜びの方が大きくて、こんな機会を与えてくれた娘に感謝の思いでいっぱいです。

(H・N SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.110(2019年5月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.34」

※この記事は2019年に執筆したものです

古着を活かして、オリジナルカーテンをつくる

 2年間かけっぱなしだったキッチンの収納棚の目隠しカーテンが色褪せてきて、気になっていました。そこで、襟が擦れて着られなくなった白のワイシャツ2枚と、チェックのシャツ1枚で、新しくカーテンを作ることにしました。

手作りしたキッチンの収納棚の目隠しカーテン

 上下2つに分け、丈が短い上のカフェカーテンは、ワイシャツの袖の部分を開いてつなぎ合わせ、チェックのシャツで縁どりしました。下の丈が長い方も、シャツ2枚の身頃の部分をつなぎ合わせただけで、上と同じようにチェックのシャツを縫い合わせて統一感を出しました。

チェックのシャツの端切れで、可愛く縁取り

 サイドのミニカーテンは、シャツのポケットの部分をそのまま付けて、すぐ使えるようにキッチンキャップ入れにしました。出来上がったものをかけるとパッと明るくなり、キッチンに立つのが楽しくなりました。

シャツのポケットをそのまま縫い付け、キッチンキャップ入れとして活用

 気になっていたことが解決し、心が軽くなったのが嬉しく、新たに購入しなくても、古着をリメイクしてお気に入りのカーテンが出来たことに、とても満足しています。

(H・N SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.109(2019年4月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.33」

※この記事は2019年に執筆したものです

流木__海からのいただきもの

 海が近いのでよく遊びに行く。砂浜では色々なものを発見し、まるで宝探しのように夢中になる。その中でもお気に入りは流木だ。
 波に何度も打たれ、揉まれ、たどり着いた枝には、なんとも言えない滑らかさがあり、形や色味、模様が個性豊かで味わい深い。これはなんの木だろう? 一体どこからどのように流れ着いたのだろう? 一本の枝から壮大なドラマを感じるのだ。


 それだけでも充分楽しいが、なにか作れたらきっと素敵だなと、いつのまにかたくさん集めてしまった。ちょっと手を加えてみるといい雰囲気だ。それに、眺めていると潮風と波の音、キラキラと光るあの水平線を思い出す。また拾いに行こう。いっしょにゴミも。
 海に行くときは、ゴミ袋とトングを持参するのが習慣になった。圧倒的に目につくプラスチックのゴミ。どこから来たのだろうと、流木と同じく様々なことを考える。そして、世界をつなぐこの海が、いつまでも美しく豊かであってほしいと強く願う。

自由な発想で作った流木のオブジェ
流木の作品。左上から時計回りに、星のモチーフ、マクラメタペストリー、フォトディスプレイ、キーフック、娘さんが作った織物

自宅から車で15分ほどの宮崎市内の砂浜に流れ着いた流木


(S・S / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.108(2019年3月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.32」

羊からのおすそ分け。羊毛フェルトで作品作り

 ここ数年、肌寒くなってくると部屋の奥から引っ張り出してくるものがある。モコモコな羊からのおすそ分け。羊毛フェルトだ。


 ニードルという細かいギザギザの切れ込みが入った専用の針でサクサク刺していくと、フェルトの繊維が絡まって、固まっていく。バランスを見ながら好みの形になるまで、ひたすら刺していくのだ。割と単調な作業なので、コツをつかめば、おしゃべりしながらでもできる。もっと大掛かりのものを作る場合は、石けん水で濡らし、こすって形成していく手法もある。


 なかなか根気のいる作業だが、みるみるうちにふわふわだった毛が形になっていくのはワクワクする。それに、羊毛フェルトは自然素材とも相性バツグン。枝や木の実などと組み合わせると、なんとも言えない温かみが作品に加わり、おもわず笑みがこぼれる。


 今冬はバッグを作ろう。触れるとポカポカが伝わってきて「羊さんありがとう!」という思いになる。毎年少しずつ増えていくあったかアイテムたち。寒い季節限定のわたしの楽しみだ。

今冬作ったバッグ。石けん水で濡らし、こすって形にしていくウェットフェルト手法で製作。白クマも羊毛フェルトで手作り
ニードルを使った作業風景
クルミの殻と羊毛フェルトで作ったオーナメント。ピンクッションとしても使える

Sさんの長女が、6歳の時に作った羊毛フェルトの小物入れ


(S・S / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.107(2019年2月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.31 」

麦わらで作る“光のモビール”に癒やされる

 出会いは山梨県北杜市の農園。豊かな畑の横にある小屋に、なにかが吊り下がっていた。それは農園の奥さんが作ったもので、フィンランドの伝統工芸であり、「光のモビール」とも呼ばれる「ヒンメリ」だと知る。語源はスウェーデン語の「himmel(天)」。風に優しく揺れるそれはとても美しく、心を奪われた。


 農園の端の零れ種から育ったライ麦を、根元から1束いただいた。麦わらの皮を1本1本剥いていくと、中からツヤツヤと黄金色に光る茎が顔を出し、心が踊った。この茎を適当な長さに切り揃え、糸を通して結ぶ。そんなシンプルな作業から様々な幾何学模様が生まれるのだ。


 古代ヨーロッパのゲルマン民族は自然を大切にし、精霊信仰に基づく生活を送っていた。寒いフィンランドでは、ヒンメリを太陽神の誕生祭や収穫祭、クリスマスなどで飾り、家の魔除けのお守りでもあったという。そんな、麦わらと糸と祈りで結ばれたヒンメリ。眺めていると、豊かな優しさに癒やされ、神秘さを感じる。

Sさんが手作りした光のモービル・ヒンメリ。柔らかい光の中に、幾何学模様が美しく映える。

山梨県北杜市の農園で、初めて出合ったヒンメリ


(S・S / SNIクラフト倶楽部)

『白鳩』誌No.106(2019年1月号)「つくる、祈る、日々の生活 No.30 」